男子やり投(やり投げ)の2026年・日本ランキングTOP30を、記録・所属・大会名・会場・日付つきで全30行そろえました。今季の日本最高は﨑山雄太(ヤマダホールディングス)が6月13日の日本選手権で投げた82m05。80mを超えたのは、9月19日に80m44を投げた清川裕哉(東海大)と合わせて2人だけです。順位づけはWorld Athleticsの日本トップリストを基盤に、主催団体の公式リザルトで1行ずつ照合しました。アジア大会2026の男子やり投決勝は9月28日20時15分です。

この記事でわかること

  • 男子やり投の2026年・日本ランキングTOP30(記録・所属・区分・大会・会場・日付の全列つき)
  • 1位・﨑山雄太の82m05が、日本記録・日本歴代・2026年の世界のどこに位置するか
  • 今季のランキングを動かした5つのポイント(アジア大会派遣設定記録/日本選手権1日で8人/17大会への分散/学生の厚み/9月に動いた2つの記録)
  • 37年間ひとつも動いていない日本記録87m60と、日本歴代10傑のいま
  • アジア大会2026の男子やり投(9月28日20時15分決勝)の日程・放送・日本代表

晴れた日の陸上競技場のやり投助走路と芝生のフィールド

男子やり投の日本ランキング2026 TOP30【9月21日時点】

2026年シーズンに日本人選手が出した記録を、1人1記録で上位30位まで並べたものです。所属は、その記録が出た大会の公式リザルトの表記に合わせています。

順位記録選手所属区分大会会場日付
182m05﨑山 雄太ヤマダホールディングス社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
280m44清川 裕哉東海大(修士1年)大2026年度第2回宮崎陸協強化記録会ひなた陸上競技場(宮崎)9/19
379m47鈴木 凜九州共立大(修士2年)大第60回織田幹雄記念国際広島広域公園陸上競技場4/29
479m19巖 優作山陽特殊製鋼社第74回全日本実業団選手権たけびしスタジアム京都9/12
578m32中村 竜成染めQ社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
678m12長沼 元スズキ社Athlete Night Games in FUKUI 20269.98スタジアム(福井)8/14
777m18相原 大聖宮崎県スポ協社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
876m82山田 隼人日吉社第60回織田幹雄記念国際広島広域公園陸上競技場4/29
975m26鈴木 凰士朗中京大(2年)大第91回岐阜県選手権長良川競技場(岐阜)7/4
1074m87吉野 壱圭九州共立大(修士2年)大第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
1174m70ディーン 元気ミズノ社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
1274m66南 辰貴Fustar社第69回九州実業団選手権本城陸上競技場(福岡)5/24
1374m42牧野 快士矢場とん社第86回愛知県選手権パロマ瑞穂北陸上競技場(愛知)7/18
1474m15朝田 康聖大阪教育大(修士2年)大第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
1574m14鐘ヶ江 周Smart Throwers社Athlete Night Games in FUKUI 20269.98スタジアム(福井)8/14
1674m06谷口 大翔順天堂大(3年)大第105回関東インカレカンセキスタジアムとちぎ5/24
1773m75國安 大悟国士舘大(3年)大第95回日本インカレ日産スタジアム(神奈川)9/5
1872m79比嘉 遥フクモト工業社第81回九州選手権KUROKIRI STADIUM(宮崎県山之口陸上競技場・都城)8/23
1972m72増田 悠悟アカデミアスポーツ社第70回関西実業団選手権たけびしスタジアム京都5/24
2072m46須藤 勇大佐野支援学校教員社第70回関西実業団選手権たけびしスタジアム京都5/24
2072m46清野 康介筑波大(4年)大第95回日本インカレ日産スタジアム(神奈川)9/5
2272m24角田 直之ゴールドジム社第89回東京選手権駒沢オリンピック公園総合運動場(東京)4/26
2371m55渡邉 宙九州共立大(3年)大第85回滋賀県選手権平和堂HATOスタジアム(滋賀・彦根)7/12
2471m43石山 歩愛知陸協社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
2571m32新垣 暁登LMAC社第74回全日本実業団選手権たけびしスタジアム京都9/12
2671m31外島 大翔日本体育大(4年)大第37回五大学対校選手権相模原ギオンスタジアム(神奈川)7/12
2771m30大西 航生順天堂大(4年)大2026日本学生個人選手権レモンガススタジアム平塚(神奈川)4/24
2870m88山下 晋平京都陸協社第110回日本選手権パロマ瑞穂スタジアム(愛知)6/13
2970m46岩坂レオン九州共立大(1年)大香港2026 U20アジア選手権(2位)啓徳青年運動場(香港)5/31
3070m20森澤 知慶筑波大(3年)大第105回関東インカレカンセキスタジアムとちぎ5/24

※区分は「大」=大学生・大学院生、「社」=社会人(実業団・クラブ・陸協登録など)。TOP30に高校生はいません。

この表の作り方と、確認した範囲

順位づけの基盤は、World Athleticsの2026年 男子やり投 日本トップリスト(日本国籍・1人1記録)です。集計基準日は2026年9月21日。このリストは各国連盟から提出・認定された記録で構成されており、国内の主催団体のリザルトより更新が速いという利点があります。

30行の裏取りの内訳はこうです。28行は主催団体(日本陸連・都道府県陸協・学生連合・実業団連盟など)の公式リザルトと1行ずつ突き合わせ、漢字表記・所属・記録・大会名・会場・日付を確認しました。1行は29位・岩坂レオンが香港で出した記録で、日本陸連のU20アジア選手権 結果一覧PDFで記録と順位(2位)を確認しています。残る1行は26位・外島大翔で、記録値だけが未確認です。確認に使ったリザルトは記事末尾の出典にすべて載せています。

留保は2点あります。

  • 26位・外島大翔の71m31は、主催者の公式リザルトがネット上に公開されていませんでした。氏名・所属・学年は関東学生対校選手権のリザルトで、大会名・会場・日付は日本学生陸上競技連合の大会情報で確認しましたが、記録値そのものの裏づけはWorld Athleticsの登録リストだけです
  • 19位・増田悠悟の72m72は、第70回関西実業団選手権のオープン参加(OPN)での記録です。公式の順位はつきません。World Athleticsのリストには収載されているため本記事の表にも載せています。同じ日の同種目の正式優勝は巖優作(山陽特殊製鋼)の77m04でした

所属の表記は大会によって変わります(須藤勇大は関西実業団のリザルトで「佐野支援学校教員」、日本選手権では「Smart Throwers」)。本記事は記録が出た大会のリザルト表記を基本にし、大学名だけは速報の略称ではなく正式名称に統一、学年はリザルトに表記があるものだけを括弧で補いました。吉野壱圭の「修士2年」は、日本インカレの公式リザルトの「(M2)」表記によるものです。

TOP30の数字を、自分の記録に重ねる目盛り

同じ30行でも、どこに線を引くかで見え方が変わります。今季の日本リストを区切りで並べるとこうなります。

位置記録
今季の日本最高(1位)82m05
日本トップ3の入口(3位)79m47
TOP10の入口(10位)74m87
TOP30の入口(30位)70m20
日本リスト100位63m37

70mを超えると日本の30番以内、75m前後でTOP10圏、そこから80mまでがもうひと山、という並びです。日本リストの100位(63m37)から1位(82m05)までの幅は18m68。やり投は1試合6投のあいだでも記録が数メートル動く種目なので、シーズンのどこかで出た一投が年間の順位をそのまま決めます。同じ作り方で並べた男子走幅跳ランキング2026(日本TOP30・風速つき)と見比べると、フィールド種目でも記録の散り方がかなり違うことがわかります。

1位・﨑山雄太の82m05は、日本選手権の「最後の1投」で出た

今季の日本最高82m05が生まれたのは、6月13日16時40分に始まった第110回日本陸上競技選手権大会(パロマ瑞穂スタジアム)の男子やり投決勝です。日本陸連は公式サイトで、この優勝が﨑山の2連覇であり、アジア大会の日本代表内定につながったと伝えています。

日本陸連のライブリザルトには、決勝に進んだ20人の全試技が1投ずつ残っています。上位8人の記録を並べると、この試合がどう動いたかがそのまま読めます。

TRACK HUB RESULTS

第110回日本陸上競技選手権大会 男子やり投 決勝

2026-06-13 パロマ瑞穂スタジアム(愛知・名古屋市瑞穂公園陸上競技場)

男子やり投 決勝

順位選手所属記録備考
1﨑山 雄太ヤマダホールディングス82m056投目
2巖 優作山陽特殊製鋼79m135投目
3清川 裕哉東海大78m535投目
4中村 竜成染めQ78m323投目
5相原 大聖宮崎県スポ協77m186投目
6長沼 元スズキ76m806投目
7吉野 壱圭九州共立大74m876投目
8ディーン 元気ミズノ74m703投目

5投終了時点で、﨑山は4位だった

﨑山の6投は 77m59 → 76m44 → ファウル → 78m17 → ファウル → 82m05。5投目までの自己最高は4投目の78m17です。同じ時点で巖優作が5投目に79m13、清川裕哉が5投目に78m53、中村竜成が3投目に78m32を出していたので、5投終了時点の﨑山は4位でした。そこからの最終投82m05は、4投目の78m17を3m88上回る一投。順位を4位から1位に引き上げています。

上位8人のうち6人が、5投目か6投目に最高記録を出した

この決勝の特徴は、記録が後半に集中していることです。上位8人の「自己最高記録が出た試技」を数えると、5投目が2人(巖・清川)、6投目が4人(﨑山・相原・長沼・吉野)で、計6人が後半3投で自分の最高を出しています。3投目までに最高が出たのは中村とディーン元気の2人だけでした。

やり投の決勝は、3投を終えた時点で上位8人だけが残り、投てき順も入れ替わります。この日はその残り3投で8人中6人が3投目までの自己最高を更新し、優勝者まで入れ替わったことになります。

夕方の陸上競技場の芝生に置かれたやり

2〜4位との差は1m61〜2m86

82m05という数字は、今季の日本リスト2位・清川裕哉の80m44と1m61差、3位の鈴木凜79m47とは2m58差、4位の巖優作79m19とは2m86差です。今季の2〜4位が79mから80m台前半に固まっているなかで、﨑山だけが1つ上の段にいます。

ただし﨑山自身の基準で見ると、82m05は物足りない数字でもあります。2025年7月5日の日本選手権(国立競技場)で投げた87m16は日本歴代2位で、今季のベストはそこから5m11低い記録です。日本陸連の公式X(@jaaf_official)は、この87m16が東京2025世界陸上の参加標準記録85m50を突破する記録で、同大会の日本代表内定につながったと伝えています。

東京2025世界陸上/World Athletics Championships Tokyo 25@WATokyo25

DAY5 9/17(水)EVENING 男子やり投 予選グループA 19:10 🇯🇵#ディーン元気 Roderick Genki DEAN 19:10 🇯🇵#﨑山雄太 Yuta SAKIYAMA 女子200m 予選5組 19:30 🇯🇵#井戸アビゲイル風果 Abigeirufuka IDO 速報はこちら

2025年9月17日Xで投稿を見る →

東京2025世界陸上の大会公式アカウントが、﨑山の出た9月17日の男子やり投予選A組を告知した投稿です(写真は﨑山とディーン元気)。日本代表として臨むアジア大会で、昨年の87m16にどこまで近づけるかが焦点になります。

2026年の男子やり投を動かした5つのポイント

TOP30を上から下まで読んで見えてきたことを5つにまとめます。

① アジア大会の派遣設定記録80m45を超えたのは、今季ひとりだけ

日本陸連がアジア大会の代表選考で示した派遣設定記録は、男子やり投が80m45でした。

今季この80m45を超えた日本人は、﨑山雄太ただ1人です。しかも2つの大会で超えています。4月29日の織田幹雄記念国際(広島広域公園)で81m78を投げて優勝し、6月13日の日本選手権で82m05。日本選手権を制したうえで、参考競技会でも派遣設定記録を上回った形です。

惜しかったのが2位の清川裕哉です。9月19日の80m44は、派遣設定記録に1cm足りない数字でした。ただし日本陸連の選考要項では、派遣設定記録の突破は2026年1月1日から日本選手権終了までが対象で、代表選手の発表は6月です。9月19日の記録は、そもそも選考が終わったあとの投てきでした。

② TOP30の20人が、日本選手権の決勝に立っていた

6月13日の男子やり投決勝に進んだのは20人。その20人全員が、今季の日本リストのTOP30に入っています。TOP30の3分の2は、日本選手権の決勝に並んだ顔ぶれがそのまま占めているということです。

さらにそのうち8人(﨑山・中村竜成・相原大聖・吉野壱圭・ディーン元気・朝田康聖・石山歩・山下晋平)は、日本選手権で出した記録がそのまま今季の自己最高になっています。この種目の1年は、6月13日の1日に相当な比重がかかっていました。

逆に言えば、残り10人は日本選手権の決勝に立っていない選手たちです。県選手権・地区実業団・学生の大会・海外の大会で記録を出した10人が、日本選手権組のあいだに割って入っています。

③ 記録は17の大会に分散し、主戦場は県選手権と地区実業団

TOP30の30の記録が、どの大会で出たかを数えると17大会に散らばっていました。

大会TOP30に入った人数
第110回日本選手権(6/13)8人
第60回織田幹雄記念国際(4/29)2人
第74回全日本実業団選手権(9/12)2人
Athlete Night Games in FUKUI 2026(8/14)2人
第105回関東インカレ(5/24)2人
第95回日本インカレ(9/5)2人
第70回関西実業団選手権(5/24)2人
その他10大会各1人

目を引くのは、地区の実業団選手権と県選手権が記録の出どころになっていることです。5月24日だけで、関西実業団(たけびしスタジアム京都)から2人、九州実業団(本城陸上競技場)から1人、関東インカレ(カンセキスタジアムとちぎ)から2人がTOP30入りしています。さらに第91回岐阜県選手権(7/4)、第86回愛知県選手権(7/18)、第89回東京選手権(4/26)といった県レベルの選手権からも、それぞれ1人ずつ入りました。

なぜ散るのか。理由は2つあります。ひとつは、やり投を実施する競技会そのものが限られること。長い助走路とフィールドを縦に使う広い着地エリアが要るため、実施種目にやり投がある大会を選んで出ることになります。

もうひとつは、シーズンのピークが1か所に集まっていないこと。今季のTOP30の日付を月ごとに数えると、4月が4人、5月が6人、6月が8人、7月が4人、8月が3人、9月が5人。日本選手権のある6月が最多とはいえ、4月から9月までほぼ均等です。トラック種目のランキングと違い、やり投は大きな大会に人が集まりきらず、記録が全国に散ります。

④ TOP30の13人が学生、高校生はゼロ

TOP30の所属を数えると、大学生・大学院生が13人。4割を超える計算です。大学別に見ると偏りがはっきりします。

大学TOP30入り
九州共立大4人(鈴木凜3位・吉野壱圭10位・渡邉宙23位・岩坂レオン29位)
順天堂大2人(谷口大翔16位・大西航生27位)
筑波大2人(清野康介20位・森澤知慶30位)
東海大/中京大/国士舘大/大阪教育大/日本体育大各1人

九州共立大の4人が突出しています。1年生の岩坂レオンから大学院2年の鈴木凜まで学年も幅広く、この種目の学生の中心がどこにあるかがそのまま出ています。

学生の上位2人(清川裕哉・鈴木凜)は、日本リストでも2位・3位です。その2人が直接対決したのが9月5日の日本インカレ(日産スタジアム)でした。優勝は清川裕哉(東海大・修士1年)の75m12、2位が鈴木凜(九州共立大・修士2年)の75m10で、その差はわずか2cm。3位は國安大悟(国士舘大3年)の73m75でした(日本インカレ2026の全44種目の結果はこちらの記事にまとめています)。社会人と学生が同じ表の上位で混ざるのが、今季の男子やり投の姿です。

一方、TOP30に高校生は1人もいません。2026年のインターハイ(第79回全国高校総体・7月30日・平和堂HATOスタジアム)の男子やり投は、松本一颯(森村学園・神奈川3年)が64m77で優勝しました。World Athleticsの日本リストでは、松本の今季ベストは同じ7月30日に彦根で投げた65m08として載っており、その順位は76位。TOP30の入口である70m20には5m12足りません。

やりの規格が高校と一般で同じ(男子は高校もU20も一般と同じ800g)であることを考えると、素直に「差」として読める数字です。参考までに日本高校記録は76m54・村上幸史(今治明徳)で、1997年10月19日の記録(日本陸連発行のインターハイ公式リザルトのヘッダに「日本高校記録(NHR)」として記載)。29年前のこの記録は、今季のTOP30に当てはめると9位相当です。

⑤ 9月に入ってから、ランキングが2か所動いた

この記事の基準日を9月21日にしている理由がここにあります。9月だけで、TOP30の上位が2か所動きました。

  • 9月12日・第74回全日本実業団選手権(たけびしスタジアム京都) — 巖優作(山陽特殊製鋼)が79m19で優勝。6月の日本選手権で出した79m13を6cm更新し、今季4位に位置を固めました
  • 9月19日・2026年度第2回宮崎陸上競技協会強化記録会(ひなた陸上競技場) — 清川裕哉(東海大)が80m44。日本選手権の78m53を1m91更新し、今季の日本リストで2位に浮上しました

全日本実業団の決勝は、日本選手権とは違う顔ぶれの並びになりました。

TRACK HUB RESULTS

第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会 男子やり投 決勝

2026-09-12 たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園陸上競技場)

男子やり投 決勝

順位選手所属記録
1巖 優作山陽特殊製鋼79m19
2山田 隼人日吉76m56
3ディーン 元気ミズノ73m88
4南 辰貴Fustar72m18
5中村 竜成染めQ72m15
6鐘ヶ江 周Smart Throwers71m97
7新垣 暁登LMAC71m32
8須藤 勇大佐野支援学校教員71m13

日本選手権1位の﨑山雄太は、この全日本実業団を欠場しています(公式速報の表記はDNS)。主要な全国大会が終わったあとの記録会でも順位が動く、というのがこの種目の実情です。だからこそ、更新の止まったランキング表と、いま現在のランキングは中身が違います。

日本記録87m60と世界34位——男子やり投のいまの立ち位置

今季のランキングを読むうえで、基準になるのが日本記録です。日本陸連の日本記録一覧(2026年9月14日現在/申請中の記録も含む)に載っている男子やり投の日本記録は、87m60・溝口和洋(ゴールドウイン)。1989年5月27日、アメリカ・サンノゼの国際グランプリで出た記録です。1989年5月27日から数えて2026年9月で37年。この間、日本記録は一度も更新されていません。

日本歴代10傑

World Athleticsの日本人オールタイム・トップリスト(1人1記録)から10人を並べます。

歴代記録選手年
187m60溝口 和洋1989
287m16﨑山 雄太2025
386m83新井 涼平2014
485m96村上 幸史2013
584m66ディーン 元気2025
682m52小南 拓人2021
781m84吉田 雅美1990
881m73寒川建之介2020
981m67清川 裕哉2024
1081m63小椋 健司2021

この表で「年」までしか書いていないのには理由があります。World Athleticsのリストと国内のランキング資料を突き合わせると、村上幸史・寒川建之介・清川裕哉の3件で日付の表記がずれていました。村上(4月28日と4月29日)と寒川(7月19日と7月18日)は1日違いで年は一致します。一方、清川裕哉の81m67だけは年そのものが食い違い、World Athleticsは2024年3月29日、国内の資料は2025年3月30日としています。主催団体のリザルトで確定できなかったため、本記事は順位づけの基盤にしたWorld Athleticsの表記(清川は2024年)に合わせ、日は載せていません。記録と歴代順位は両方の資料で一致しています。

歴代10傑のうち、今季も投げているのは3人だけ

この10人を今季の日本トップリスト(100位=63m37まで)と照合すると、2026年の記録が残っているのは﨑山雄太・ディーン元気・清川裕哉の3人だけでした。新井涼平・村上幸史・小南拓人・吉田雅美・寒川建之介・小椋健司の6人は、今季の100傑に名前がありません(溝口和洋は現役選手ではありません)。

歴代の顔ぶれと現役の顔ぶれが、この種目ではきれいに分かれています。言い換えると、日本記録に近づける位置にいる現役選手は、いま実質的に﨑山ひとりという状況です。﨑山の2025年の87m16は、日本記録までわずか44cmでした。

2026年の世界トップ10と、日本の34位

World Athleticsの2026年 世界トップリスト(1人1記録)で、﨑山雄太の82m05は世界34位。日本リスト2位の清川裕哉80m44は54位にあたります。世界TOP10は次のとおりです(選手名はWorld Athleticsの表記のまま)。

世界順位記録選手国
192m62Rumesh Tharanga PATHIRAGEスリランカ
290m40Julian WEBERドイツ
388m05Neeraj CHOPRAインド
487m68Rohit YADAVインド
587m59Curtis THOMPSONアメリカ
687m47Dawid WEGNERポーランド
786m93Anderson PETERSグレナダ
885m73Cameron MCENTYREオーストラリア
985m65Aliaksei KATKAVETSベラルーシ
1085m41Yash Vir SINGHインド

まず目につくのは、世界1位のパティラゲ(スリランカ)と、3位・4位・10位のインド勢です。トップ10のうち4人がアジア陸上競技連盟の加盟国から出ています。日本陸連の企画記事「記録と数字で楽しむアジア大会:男子投てき」も、2024年以降に90mを超えた世界の7人のうち3人がアジアの選手だと整理しています。挙げられているのは92m97のA・ナディーム(パキスタン/2024年)、92m62のR・T・パティラゲ(スリランカ/2026年)、90m23のN・チョプラ(インド)の3人です。

つまり男子やり投は、世界最高峰のレベルがそのままアジアの中にある種目です。世界34位の日本最高記録が、アジア大会でどこまで通用するかという構図になります。

そのパティラゲの強さは、9月の舞台でも見えていました。9月11〜13日にブダペストで行われた第1回WAアルティメット選手権の男子やり投で、World Athleticsの公式レポートによると91m09を投げて優勝しています。また今季世界8位のCameron MCENTYRE(オーストラリア)は、4月29日の織田幹雄記念国際(広島広域公園)で77m57を投げて3位。世界の上位選手が国内の大会に出ていることも、今季の特徴でした。

アジア大会2026の男子やり投は9月28日20時15分決勝

今季のランキングがそのまま地続きになるのが、愛知・名古屋2026アジア競技大会(第20回アジア競技大会)です。日本陸連の大会特設サイトによると、陸上競技は9月23日(水・祝)から29日(火)までの7日間、名古屋市瑞穂公園陸上競技場で行われます。

日本陸連の競技日程(2026年9月22日現在の版・9月23日確認)では、男子やり投の決勝は大会6日目・9月28日(月)のイブニングセッション、20時15分スタートです。同じセッションの前後には次の決勝が並びます。

時刻種目
19:43男子3000m障害物 決勝
19:55男子走幅跳 決勝
20:05男子1500m 決勝
20:15男子やり投 決勝
20:43女子5000m 決勝

日本代表は﨑山雄太(ヤマダホールディングス)と鈴木凜(九州共立大・大学院2年)の2人。今季の日本リストの1位と3位にあたる顔ぶれで、日本陸連の大会特設サイトは2人とも東京2025世界陸上の日本代表だったと紹介しています。

放送・配信

日本陸連のオンエア情報では、男子やり投決勝が行われる9月28日(月)の放送予定はこうなっています。

  • TBS系列(地上波)18:30〜23:27 — 放送予定種目に男子やり投決勝が入っています。同じ枠で男子走幅跳決勝・男子1500m決勝・男女4×100mリレー決勝なども放送されます。TVerでリアルタイム配信あり
  • U-NEXT(ライブ配信)配信開始9:30〜 — 大会期間中は最大7チャンネルで同時ライブ配信

大会全体の日程と見どころは、アジア大会2026陸上の日程×日本代表ガイドにまとめています。

大会記録は89m15、日本記録でも届かない

日本陸連の企画記事によると、アジア大会の男子やり投の大会記録は89m15・趙慶剛(中国)。2014年10月2日の仁川大会で出た記録です。日本記録の87m60(溝口和洋・1989年)でも1m55足りません。それだけこの種目のアジアのレベルが高いということです。

同じ企画記事は、今季92m62まで記録を伸ばしたR・T・パティラゲ(スリランカ)について、2026年9月7日までに出場した13試合のうち8試合で88m以上を投げていると整理し、12年動いていない大会記録89m15が更新される可能性に触れています。名古屋では、日本勢の順位争いと同時に大会記録の行方も見どころになります。

前回2023年の杭州大会の上位3人は88m88・87m54・82m68で、**銅メダルはディーン元気(ミズノ)**でした。ディーン元気は今季も日本リスト11位(74m70)に名前を残しています。なお、2018年・2023年と連覇し3連覇を狙っていたN・チョプラ(インド)は、ケガのため欠場を発表しています。

日本は金メダル8個の「お家芸」だった

日本陸連の企画記事は、アジア大会の男子やり投で日本が獲得したメダルを金8・銀6・銅5と整理しています。金メダルの8回は1951年・1962年・1970年・1974年・1982年・1986年・1990年・2010年。顔ぶれを見ると、日本記録との関係が見えてきます。

  • 1986年の金=溝口和洋。この3年後の1989年に87m60の日本記録を出しています
  • 1990年の金=吉田雅美。日本歴代7位の81m84の保持者です
  • 2010年の金=村上幸史。日本歴代4位の85m96の保持者で、これが日本にとって直近の金メダルです

つまり日本は、2010年の村上幸史を最後に16年間この種目で金から遠ざかっています。今季のランキングの数字を見るかぎり名古屋でも簡単ではありませんが、﨑山が昨年の87m16に近い投てきを再現できれば表彰台は見えてきます。

男子やり投げの記録の目盛り——やりの規格とカテゴリ別の日本記録

ランキングの数字を読むには、「どのやりを投げた記録か」を押さえておく必要があります。やり投は年齢区分でやりの重さと全長が変わるからです。日本陸連の競技規則TR32.1の用器具規格表(ルールブック243ページ)によると、男子のやりはこうなっています。

区分重さ(最小)全長
一般・高校・U20800g2m600〜2m700
U18700g2m400〜2m500
中学(やり投の実施なし)—

ポイントは2つです。1つ目は、高校生も一般と同じ800gのやりを投げること。 同じ規格表で砲丸投の投げ方の基本で扱う砲丸を見ると、男子は中学・U18が5.000kg、高校・U20が6.000kg、一般が7.260kgと3段階に分かれています(ルールブック242ページ)。やり投は高校とシニアで用具が同じなので、インターハイの記録と日本ランキングを同じ物差しで比べられます。

2つ目は、U18(高校1・2年生が中心の年齢区分)の700gのやりが全長2m400〜2m500であること。 インターネット上には2.30〜2.40mと書かれた資料が今も残っていますが、これは改定前の数値です。ただし実務上の注意もあります。日本陸連が主催するU18の全国大会(JOCジュニアオリンピックカップU18)の実施種目は、男子やり投が「やり投(800g)」です。出典は大会要項の1ページで、女子は600gと記載されています。規格表の上では男子U18=700gですが、日本のU18の全国大会で実際に投げるのは800gのやりだ、ということです。なお中学校の全国大会(全日中)の男子投てきは砲丸投(5.000kg)のみで、やり投は行われません。

カテゴリ別の日本記録

区分記録選手年月日
日本記録87m60溝口 和洋1989年5月27日
日本学生記録84m28ディーン 元気(早稲田大)2012年4月29日
U20日本記録78m57ディーン 元気(早稲田大)2010年11月3日
日本高校記録76m54村上 幸史(今治明徳)1997年10月19日
U18日本記録74m26島田 浩次(東稜高)1987年10月28日

日本学生記録の84m28は、日本学生陸上競技連合の日本学生記録一覧に載っているもので、2012年4月29日に広島広域公園陸上競技場の織田記念で出た記録です。TOP30に13人の学生が並ぶ今季も、この84m28に迫る記録は出ていません(学生の今季最高は清川裕哉の80m44)。日本記録・U20日本記録・U18日本記録の出典は日本陸連の日本記録一覧・U20日本記録・U18日本記録です。

高校記録のほうがU18記録より2m以上も上なのは、年齢区分と学年区分のずれが理由です。日本陸連のJOCジュニアオリンピックカップU18/U16陸上競技大会の大会要項は、2026年大会の申込資格を「U18:2009年1月1日から2010年12月31日の間に生まれた競技者」「U16:2011年1月1日から2014年4月1日の間に生まれた競技者」と定めています(要項1ページ)。競技会当日の年齢ではなく、競技を行う年の12月31日時点で16歳か17歳、という区切り方です。学年でいえば高校1年・2年が中心で、中学生はU16に入ります。

日本高校記録の76m54を出した村上幸史は、World Athleticsの選手データでは1979年12月23日生まれ。1997年10月19日の時点ではまだ17歳でしたが、同年12月23日に18歳になっています。1997年12月31日時点では18歳のため、高校生ではあってもU18の対象ではありませんでした。だから高校記録とU18記録は別々の数字になります。

なお、日本陸連のU18日本記録一覧では種目名が「やり投(700g)」であるのに対し、74m26には「(800g)」と併記されています。1987年当時の規格で投げられた記録だということです。

よくある質問

男子やり投の日本記録は誰の何メートルですか?

87m60・溝口和洋(ゴールドウイン)です。1989年5月27日、アメリカ・サンノゼの国際グランプリで出た記録で、日本陸連の日本記録一覧(2026年9月14日現在)にもこの記録が載っています。1989年から2026年まで37年間、一度も更新されていません。日本歴代2位は﨑山雄太が2025年に出した87m16で、日本記録との差は44cmです。

2026年の男子やり投の日本一は誰ですか?

﨑山雄太(ヤマダホールディングス)の82m05です。6月13日の第110回日本選手権(パロマ瑞穂スタジアム)の決勝、最後の6投目で出しました。日本陸連はこの優勝を2連覇と伝えています。今季80mを超えた日本人は、9月19日に80m44を投げた清川裕哉(東海大)と合わせて2人だけです。

アジア大会2026の男子やり投はいつですか?誰が出ますか?

決勝は9月28日(月)20時15分です(日本陸連の競技日程・9月23日確認)。会場は名古屋市瑞穂公園陸上競技場。日本代表は**﨑山雄太(ヤマダホールディングス)と鈴木凜(九州共立大・大学院2年)**の2人です。9月28日はTBS系列(地上波)が18時30分から23時27分の枠で放送予定で、男子やり投決勝も放送予定種目に入っています。

男子のやりは何グラムですか?中学生でもやり投はできますか?

日本陸連の用器具規格表では、男子のやりは**一般・高校・U20が800g(全長2m600〜2m700)、U18が700g(全長2m400〜2m500)**です。高校生も一般と同じ800gを投げます。中学は規格表に欄がなく、全日中の男子投てきは砲丸投(5.000kg)だけなので、やり投を始めるのは高校からというのが一般的なルートです。

まとめ

  • 今季の日本最高は﨑山雄太(ヤマダホールディングス)の82m05。6月13日の日本選手権決勝の6投目に出た記録で、5投終了時点では4位からの逆転優勝。日本陸連はこの優勝を2連覇と伝えている
  • アジア大会の派遣設定記録80m45を超えた日本人は﨑山ひとり。2位・清川裕哉の80m44(9月19日)は1cm届かなかったが、そもそも選考期間が終わったあとの記録だった
  • TOP30の20人が日本選手権の決勝メンバーで、残り10人は県選手権・地区実業団・学生の大会・海外の大会から入っている。記録は17の大会に分散した
  • TOP30の13人が学生で、九州共立大だけで4人。一方で高校生はゼロ。インターハイ優勝者の今季ベストでも日本リスト76位だった
  • 日本記録87m60は37年動いていない。日本歴代10傑のうち今季も記録を残しているのは﨑山・ディーン元気・清川の3人だけ
  • アジア大会2026の男子やり投決勝は9月28日(月)20時15分。世界トップ10の4人がアジアの選手という激戦区で、日本の金メダルは2010年の村上幸史以来16年ない

日本のフィールド種目全体の見取り図はフィールド種目ガイドにまとめています。

やり投げは、1本ごとの助走・クロスステップ・リリースの違いが数字にそのまま出る種目です。1回の試合の6投のあいだでも記録は大きく動きますし、4月から9月まで記録の出どころが散らばる種目では、シーズン全体の波を自分で把握できているかどうかが効いてきます。陸上練習ノートアプリ「TRACK HUB」なら、試技ごとの記録と体感を日付つきで残して、シーズンを通した伸びを1本のグラフで振り返れます。自分の「よく飛ぶ日」の条件を見つける材料にしてください。