陸上の補強トレーニングでいちばん多い失敗は、種目選びではありません。「毎日やる」「走った後に余力で流す」といった置き方のほうです。日本陸連の公式手引きは、種目一覧だけでなく、それを1週間と1年のどこに置くかまで表で示しています。公式資料・査読論文・県の強化練習会の実メニューから、週のどこに何をどれだけ置くかを決められるようまとめました。

この記事でわかること

  • 迷ったら回す6種目と、日本陸連の公式分類32種目の実施ポイント
  • 日本陸連の週間・年間の練習表で補強が実際に置かれている位置
  • 短距離・中長距離・跳躍・投てきで狙う数値の違い
  • 県の強化練習会・実業団・大学が公開している補強の位置と量
  • 効果を測るフィールドテスト4種と弱点の逆引き表

迷ったらこの6種目|陸上の補強トレーニング最小構成

陸上部の補強トレーニングで腕立て伏せをする選手たち

先に結論です。時間が取れない日も、この6種目を1周すれば成立します。日本陸連の『中学校部活動における陸上競技指導の手引き』3章の体力トレーニングの部位表は、4部位を運動形態で割った上半身(押す/引く)・体幹(曲げる/反らす)・下半身(伸ばす/曲げる)・全身の7区分。全身を除く6区分から1種目ずつ拾いました。道具が要るのは**「引く」の1種目だけ**。各種目の実施ポイント(手引きの記述)は次のH2の表にまとめてあるので、ここでは崩れ方=終了の合図を添えます。

  1. 腕立て伏せ 10〜15回(上半身・押す)— 頭から踵までの一直線が崩れたら終了。崩れ方は腰の反りと肩のすくみ
  2. 斜め懸垂 8〜12回/室内はチューブ引き 20〜30回(上半身・引く)— 崩れ方は肘だけ曲げて胸が上がらない引き方
  3. スタビライゼーション 30秒(体幹・曲げる)— つま先と肘をつき、足から頭までまっすぐ。手引きはここで「『耐える』ことが目的ではなく、『どこの筋肉を使っているのか』に意識を向けましょう」と釘を刺します
  4. ウルトラマン 20〜30秒(体幹・反らす)— 崩れ方は反らし過ぎ。腰の一点で折らず背中全体で
  5. スプリットジャンプ 左右各8回(下半身・伸ばす)— 崩れ方は上体が前に折れる・開きが小さくなる
  6. ヒップレイズステップ 左右各10歩(下半身・曲げる)— 仰向けでお尻を上げたまま足で歩く。崩れ方は歩数稼ぎで、腰が落ちた時点で終わり

秒数は手引きの数値、回数は編集部の目安。1周を2〜3セット、種目間は休まず続けます。きつければ下げてかまいません(腕立て=膝つき/斜め懸垂=足を後ろへ/スタビライゼーション=膝つき15秒)。回数より、崩れないフォームで終えるほうが優先です。

補強トレーニングとは|公式32種目と中学生の筋トレで押さえる前提

補強は「技術に手が届くようにする」ための体力づくり

補強トレーニングとは、専門練習では足りない体力を別の運動で補うことです。手引きは体力と技術の関係をこう説明します。

走幅跳を例にあげると、脚筋力が高まって跳躍力が向上した結果、跳躍後の滞空時間が長くなり、かがみ跳びからはさみ跳びに挑戦できるようになります。

つまり補強は「筋肉をつけるため」ではなく、やりたい技術に手が届くようにするための練習です。体幹トレーニングは4部位のうち1部位、**筋トレ(ウエイト)**は外的負荷を使う手段の名前。体幹は32種目中8種目で、「体幹をやっているから補強は足りている」は成り立ちません。

発育段階で押さえる前提|中学生・高校生・女子

前提1|「速くなる」より先に確かなのは「ケガが減る」。山地啓司氏と橋爪和夫氏の2019年の総説(ランニング学研究)は、英文抄録の結論で「コアトレーニングや神経筋トレーニングが競技パフォーマンスを直接向上させるかについて、確固たる合意はまだ得られていない」とします(英文からの訳は編集部)。一方、高校1校の8年間を追った橋口浩治氏らの2024年の調査では、3年間どうしの比較で傷害発生割合が13.8%から10.7%に低下(P=0.002/運動部全体・約60分のプログラム全体の結果)。

前提2|「筋トレをすると身長が伸びない」は迷信。手引きは「以前から『筋トレすると身長が伸びなくなる』といわれていますが(中略)実は、全くの迷信なのです」「ただし、過度な体力トレーニングは怪我の原因になる」と明記。米国のNSCAが2009年に出したポジションステートメントも、成長軟骨(growth cartilage=成長板・関節軟骨・腱の付着部)の傷害は若年者のレジスタンストレーニングを対象とした前向き研究では1件も報告されていない、成長や成熟に悪影響を及ぼすという根拠もない、と述べます(S62・編集部訳)。避けるべきは年齢ではなく過度な量です。

前提3|同学年でも体の年齢は最大4年ずれる。手引き4章は「生物学的年齢と暦年齢との間には最大約4年の年齢差が生じることが報告されています」と書きます。回数はあくまで目安で、同じ数が全員に合うわけではありません。

高校生・女子はどこを変えるか。変わるのは負荷の上げ幅だけで、種目と「崩れたら終了」の基準は同じです。日本スポーツ協会の『発育期のスポーツ活動ガイド』は12〜14歳は軽度から中程度、15歳以降で高負荷の開始と示し、身長発育速度のピーク年齢を女子9〜11歳・男子11〜13歳とします。中学では女子が先にピークを越えている場合が多く、学年ではなく個人の状態で決めてください。

公式分類は「4部位×運動形態」|32種目の実施ポイント

手引きの32種目を、実施ポイント1行つきで全行掲載します(回数の目安は前掲の6種目と、後述の種目別早見表に)。

上半身(8種目)|腕振りで肩がすくむなら「引く」から。

形態種目手引きが示すポイント
押す腕立て伏せ腹筋を引き締め、よい姿勢で
押すディッピング踵の下に台を置くと負荷増
押すジャンプ腕立て空中で手を叩く
押す手押し車まっすぐの姿勢を保つ
引く斜め懸垂肘は外へ。胸を鉄棒まで
引くチューブ引き高回数で筋持久力
引く懸垂(順手・逆手)上がらなければ反動か逆手で
引く懸垂逆上がり胸・背中・腕・腹筋を総合的に

体幹(8種目)|部活で偏りやすいのは「曲げる」側。

形態種目手引きが示すポイント
曲げる上体起こしひねりながら起こす形も混ぜる
曲げるV字腹筋つま先タッチ。手足を床につけない
曲げるスタビライゼーション足から頭まで一直線。横向き・仰向けも(30秒)
曲げるミノムシかがみ込んで鉄棒に。脚を高く(20〜30秒)
反らす上体反らし反らし過ぎ注意。台を使う
反らすウルトラマン大腿を浮かせ、腕は大きく前へ(20〜30秒)
反らすクロール・バタフライ反らしたまま腕を回す
反らすゴロゴロ腹筋背筋手脚をつけずに転がる

下半身(8種目)|「伸ばす」はバネ系、「曲げる」は脚を戻す側。

形態種目手引きが示すポイント
伸ばすスプリットジャンプ空中で前後脚を交換。大きく開く
伸ばすサイドオープンジャンプ沈むとき膝はつま先の方向へ
伸ばすリバウンドジャンプ短い接地で高く
伸ばすバウンディング短い接地で遠くへ
曲げるヒップレイズ足の位置を遠くにすると負荷増
曲げるヒップレイズステップステップ中にお尻を下げない
曲げるハードルまたぎ支持脚はケンケンでリズムよく
曲げるバタ脚膝を伸ばし股関節で大きく

全身(8種目)|メディシンボール4と、四肢をつないで使う4種目。

形態種目手引きが示すポイント
MB前投げ沈み込みが起点
MB後ろ投げ同じく沈み込みが起点
MB前上げ足で挟んで前へ。股関節を曲げる筋
MB後ろ上げ足で挟んで後ろへ。膝を曲げる筋
その他鉄棒リバウンドジャンプ胸の高さの鉄棒へ。腕も使う
その他マウンテンクライマー脚を前後に大きく。腕に体重を
その他スパイダーウォーク仰向けで四足歩き。脚を遠くへ
その他ミックスジャンプ空中で前後・左右開脚

※MB=メディシンボール。( )内の秒数3件だけが手引きの数値で、3章に回数・セット数・頻度の指定はありません。動き方は同じPDFの58〜61ページに連続写真つき。

用具が要る種目は、鉄棒5(斜め懸垂・懸垂・懸垂逆上がり・ミノムシ・鉄棒リバウンドジャンプ)、MB 4、チューブ引き、ハードルまたぎ、ディッピング(台)、上体反らし(台)、手押し車(補助者)。鉄棒が無ければ「引く」はチューブ引き、MBが無ければ全身はミックスジャンプとスパイダーウォークで置き換えます。

部活のメニューは「体幹の曲げる」「上半身の押す」に寄りがち。抜けやすい3系統の要点は、引く=肘でなく肩甲骨を寄せる、反らす=腰の一点で折らず背中全体、下半身の曲げる=膝でなく股関節から引き上げる(編集部)。

いつ置くか|補強・体幹・サーキットトレーニングを週と1年のどこに入れるか

日本陸連の週間表で、補強はどこに置かれているか

手引き4章はスポーツ庁の運動部活動ガイドライン(2018年3月)から、学期中は週2日以上の休養日、平日2時間程度・休業日3時間程度という基準を紹介します。補強は足すものではなく、2時間の中のどこを割り当てるか。4章の週間練習例(表3〜表6)から抜き出します。

ブロック時期補強の記載
全ブロック共通一般的準備期週1回「サーキットトレーニング(8種目×3周)」
中長距離試合期週の中日に「ジョギング40分、補強運動」
投てき専門的準備期火「投てき練習(6本)、補強運動(上半身)」
投てき試合期水「ウインドスプリント(120m×4本)、補強運動(下半身)」

読み取れるのは3つ。①サーキットは一般的準備期に週1回、②試合期にも補強は残るが走る量の少ない日に置かれる、③投てきだけは補強運動に部位が名指しされ、その指定が期によって変わる(専門的準備期は上半身、試合期は下半身。いずれも週1回)。

週の型と期分け|運動形態を散らして4日に置く

手引きが明示しているのはここまで。以下はサーキット週1回ぶんを土曜に残し、平日は1回10〜20分の部位別に切り分けて配る編集部の設計例です(量を増やす表ではなく、同じ量を運動形態でばらす表)。

曜日その日の走練習補強(1回10〜20分)
火スピード系下半身・伸ばす:スプリットジャンプ/リバウンドジャンプ
水ジョグ・ドリル上半身+体幹:腕立て伏せ/斜め懸垂/スタビライゼーション
金流し・専門練習下半身・曲げる:ヒップレイズステップ/ハードルまたぎ
土長めの走全身:サーキット(後述)を3周

※月・木・日は休養(スポーツ庁の「週2日以上」に対応)。原則は、同じ運動形態を連日入れない/強度の高い補強は走練習の質を落とさない日に、の2つ。

1年で見ると、短距離走の年間練習計画(表2)でサーキットトレーニングが挙がるのは12〜1月の一般的準備期(「低めの質で多くの量をこなし、基礎体力を高める」時期)だけ(冬季の全体設計は陸上の冬季練習メニューで解説)。同じ章は「一般的にトレーニングはその開始から2〜3ヶ月で一定の効果(適応)が出始める」とも書きます。2〜3か月続けられない補強は設計として失敗です。

雨の日・時間がない日の受け皿|サーキットトレーニングの組み方

外が使えない日・30分しか取れない日の受け皿がサーキットです。手引き3章の推奨はこう。

雨や雪などで室内しか使えない場合や練習時間が短い場合、6種目前後で構成したサーキットトレーニングを展開すると、短時間で強度の高いトレーニングを行うことができます。

4章の週間練習例は**「8種目×3周」**、後述の県の強化練習会も5区分×各3セット。5〜8種目を2〜3周が、公式資料でも現場でも共通の上限です。

室内なら前掲の6種目がそのままサーキットです(屋外はジャンプ系とMBに入れ替え)。1周ごとに90秒〜2分休んで2〜3周、6種目×3周なら12〜15分、8種目でも20分弱で、30分しか取れない日に収まります。

なお手引き5章は回旋を**「腰をひねるのではなく、胸を回す」**と指示します。ひねり系を入れるなら可動域は胸郭で稼いでください。

種目別の補強メニュー|短距離・中長距離・跳躍・投てきで狙いが違う

補強トレーニングに使うミニハードルとメディシンボール

種目名はすべて手引き掲載(跳躍のみ4章表5)、組み合わせと本数は編集部の設計例です。

種目群頻度1回分の中身狙う指標
短距離週2回リバウンドジャンプ10回×3/バウンディング20m×4RJ指数を上げ接地時間を短く(吉本・斉藤2017)
中長距離週2〜3回リバウンドジャンプ20回×3/スタビライゼーション30秒×3HSJmax 35cm以上・HDI 13.6%以下(木村・古泉2015)
跳躍準備期は週3回/専門期以降は週1回準備期=「スピードを伴わない跳躍」+バウンディング30m×5本・ホッピング30m×左右各2本・縄跳び(4章表5)準備期は跳ぶ量、専門期以降は助走スピード(助走練習6本→中・全助走4本)
投てき週2回(編集部案。表6が補強運動を名指しするのは専門的準備期と試合期の週1回ずつ)MB前投げ・後ろ投げ・前上げ・後ろ上げ 各5〜8速度が高い状態で全身の力を出す(前田ら2019)

短距離|最大筋力より「短く速く」の指標が動く

吉本隆哉氏と斉藤静真氏の2017年の事例研究(スポーツパフォーマンス研究9巻78-93頁)は、11.10秒で伸び悩んだ選手(SS選手)が10.94秒に更新するまでの測定値を追跡しています。

測定項目2014年3月(11秒台)2014年10月(更新後)変化率
リバウンドジャンプ指数3.019 m/s3.778 m/s+25%
リバウンドジャンプ接地時間156 ms137 ms−12%
立五段跳12.92 m13.80 m+7%
立幅跳2.55 m2.65 m+4%
背筋力(体重比)2.15 kg/kg2.80 kg/kg+30%
股関節屈曲トルク(体重比)1.70 Nm/kg2.35 Nm/kg+38%
100m自己記録11.10 秒10.94 秒−0.16秒

変化率が最大なのは股関節屈曲トルク(+38%)と背筋力(+30%)ですが、跳躍系で動いたのはリバウンドジャンプ指数(+25%)と接地時間(−12%)。論文はこれを「極めて短時間で力発揮を遂行する能力が改善したことを意味する」と述べています。

左右差の記述も見逃せません。SS選手は3月時点で大腿後部の筋厚に1.6cmの左右差(右7.4cm・左5.8cm)があり、2013年度までは年1回程度、左のハムストリングスに肉離れを発症。10月には差が0.4cmまで縮まり、同年3月からシーズンオフまで発症なしと報告されています(走りの側は100mが速くなる方法で解説)。

同じ刺激は道具なしでも作れます。スプリントコーチの秋本真吾氏はアンダーアーマー公式コラム(2024年11月5日)で、「ふくらはぎ・足裏の筋肉の強化」「足首の筋力強化による捻挫の防止」を理由に縄跳びを勧めます。短い接地を高回数という点で、RJ指数を上げる刺激と地続きです。

中長距離|狙うのは最大パワーではなく「落ちにくさ」

木村瑞生氏と古泉一久氏の2015年の大学駅伝部16名の研究(7巻171-182頁)は、5000mベスト平均15分27秒のランナーを対象にこう報告します。

指標5000mベストとの相関
脚伸展パワーr = −0.037(ほぼ無相関)
ハーフスクワットジャンプ最高値(HSJmax)r = −0.408(有意でない)
HDI(20回連続ジャンプの高さ減衰率)r = 0.600(p<0.05・有意)

5000mベスト15分20秒未満のHDIは13.6±4.17%、15分20秒以上は**20.6±5.94%**で有意差がありました。要旨は「脚筋パワーの向上(HSJmaxを35cm以上に改善)と脚筋持久力の向上(HDIを13.6%以下に改善)を図るトレーニングの導入の必要性が示唆された」と結びます(論文も「本研究で対象とした競技レベルの被験者において」と限定)。両方が目標ですが、記録と直接結びついていたのは後者です。

量の目安はBalsalobre-Fernándezらの2016年のメタ分析。採用5件のうち4件が40〜70%1RMの低〜中強度、量は5件とも**「下半身2〜4種目+ジャンプ合計200回まで+短いスプリント5〜10本」を週2〜3回・8〜12週間**(対象は高水準の中長距離ランナー93名・17.3〜29.8歳で、中高生への一般化には注意)。重りより先に、リバウンドジャンプのような連続ジャンプで減衰率を鍛えます(800mとの組み合わせは800m練習メニュー完全ガイドで解説)。

跳躍|準備期は「跳ぶ量」、専門期からは助走スピード

跳躍の指針は手引き4章の表5です。一般的準備期のポイント欄は「跳躍運動はW-upやサーキットトレーニングの中に組み込みましょう。跳躍運動を行う場合は、スピードを伴わない跳躍の形式(立ち幅跳び、立ち背面跳び、など)で行うとよいでしょう」。早見表に挙げた週の中身(バウンディング・縄跳び・ホッピング)はこの時期のもので、跳ぶ量は短距離より多めです。

役割が変わるのは専門的準備期から。ポイント欄は「スピードを上げつつ、助走練習を行いましょう。跳躍は、短助走から全助走に段階を踏んで行いましょう。(後略)」となり、週にも助走練習6本・中/全助走練習4本が入ります。試合期のポイント欄は、全助走跳躍は負荷が大きいので怪我に注意し1本1本を集中して行うよう促す内容に変わります。つまり準備期=スピードを伴わない跳躍で量を積む/専門期以降=助走を乗せて本数を絞る。準備期の「跳ぶ」は補強側の仕事です。

投てき|挙上重量より「全身の投げ」

指針になるのが、前田奎氏らの2019年の男子やり投競技者138名の標準値研究(11巻446-458頁)です。種目選びの優先順位が数値で出ています。

測定項目やり投記録との相関係数
ワンクロス投げ.759
砲丸4.0kgバック投げ.687
砲丸7.26kgバック投げ.662
砲丸4.0kgフロント投げ.651
立ち投.647
助走付き五段跳.610
砲丸7.26kgフロント投げ.592
クリーン.589

※以下も表1の項目で、立五段跳.546/スナッチ.514/立三段跳.508/立幅跳.498/100m走−.488/ベンチプレス.432/プルオーバー.408/パラレルスクワット.369/30m走−.134(これで17項目すべて)。30m走以外はp<.01で有意。効果量は.759がvery large、.508以上がlarge、30m走がsmall、残りがmoderate。項目により回答者数は異なります。

読み方に注意が要ります。上位のワンクロス投げ(.759)と立ち投(.647)はやり投の動作そのものなので、強く相関するのは当然の面があります。投てき動作を除くと最上位は砲丸4.0kgバック投げ(.687)、以下7.26kgバック投げ(.662)・4.0kgフロント投げ(.651)・助走付き五段跳(.610)。逆にベンチプレス(.432)・パラレルスクワット(.369)の挙上重量系は下位です。論文の要旨は「各種体力とやり投記録との間には、30m走を除く全ての項目において有意な相関関係が認められた」としたうえで、結論を「身体の速度が高い状態において、全身で大きな力を発揮する能力が重要であることが示唆された」と述べます。

対象は高校生を除く競技者なので、砲丸の投げをそのまま中学生に持ち込むことはできません。32種目でこの「全身で重い物を投げる」形に当たるのはメディシンボールの前投げ・後ろ投げで、早見表もそこを軸にしました(置き換えは編集部の判断。標準値は自己申告値で合格ラインではありません。投てき動作は砲丸投の投げ方で解説)。

現場の補強メニュー|県の強化練習会・実業団・大学の公式発信

県の強化練習会は、補強を1日のどこに置いているか

茨城県中学校体育連盟 陸上競技専門部は、県選抜の強化練習会メニューをブロック別にPDFで公開しています。第4回冬季強化練習会(短距離)(1月24日・土/ブロック練習9時30分〜13時/2026年1月公開)ほか3本から、1日の並びを抜き出しました。

ブロックその日の並び(抜粋)補強の位置
短距離・男子坂上り走30m×3・60m×2/坂下り走70m×3 → ピラミッド走30→50→80→50→30m×2〜3 → 反応ゲーム+補強最後
短距離・女子ドリル・ミニハードル・流し50m×3 → 250m×4・120m×4 → 補強最後
中長距離2000mペース走 → ドリル → (300m×3本)×3セット → 補強運動・ダウン最後
投擲《メニュー0》情報共有 → 《メニュー1》補強(サーキット5区分×各3セット) → 《メニュー2》砂浜メニュー → 《メニュー3》ターンドリル最初

走る3ブロックは、その日いちばん強度の高い走練習を終えてから補強に入ります。同専門部が2022年12月17日の第3回で公開した短距離4ブロックも、4つとも最終項目が補強。3年以上あいた資料で並びは同じでした。

県をまたいでも同じでした。宮城県中学校体育連盟 陸上競技専門部の「令和8年 東北6県合宿【短距離練習】メニュー」(2026年3月20〜21日)でも、補強運動はメインメニューの後・クールダウンの前。量も指定され、20日PMは「上半身をメインに2種目程度」、21日AMは「上半身、下半身各1種目ずつ」、備考はどちらも「基本的な体力の向上。」の一言。1回2種目、日によって部位を替える——前掲の週の型と同じ配り方です。

投擲だけは順番が逆でした。5区分は筋力(45秒ハーキーステップ)/体幹/跳躍(ハードルジャンプ)/走力(20mスピードシャトルラン)/メディシンボール叩きつけ。技術のターンドリルは最後で、目的は「体力強化をした後に、自身の力みを無くした状態でイメージ通りにターンできるか意識させる」——疲れた状態でも技術が保てるかを見る、走種目とは逆向きのねらいです。

実業団の7種目は「回数」ではなく「姿勢の条件」で書かれている

プレス工業陸上競技部の公式note(2023年3月23日)が公開した同年3月21日のランニングクリニックの7種目は、基本のポーズ/前もも・後ろももスクワット/腕振り/踏みつけ/脚上げが各20回×1〜3セット、腰上げが10回×2〜3セット。編集部が数えると5種目が立位です。注意点の書き方も「手が体より前の位置にあると、背中の筋肉に効かない」「猫背では後ろももに効果なし」と、回数ではなく姿勢の条件が並びます。

「強い体幹」より「使える体幹」|為末大氏と大学の現場

世界選手権2度の銅メダリスト・為末大氏は本人コラム(スポーツナビ、2014年8月11日)で「『体幹が強いこと』が大切なのではなくて、『体幹を使えること』が大切だ」と書き、寝た状態の種目で「感触をつかんだら、実践につなげるようなトレーニングが必要」だと指摘します。

同じ順序は公式YouTube「為末大学」の「走るための体幹ドリル」(2020年9月30日公開)にも表れます。チャプターは①腹筋を鍛える練習が少ない理由②実際の体幹ドリル③体幹を鍛えるイメージの3つで、実演は2番目の章だけ。説明文も「腹筋という部位を鍛えるという概念を変えてみるもの必要ですね」。種目より先に考え方という順序が構成そのものです。

大学の現場も同じです。甲南大学女子陸上競技部の公式アカウントが補強中の一枚に添えたのは、種目名でも回数でもなくこの一文でした。

甲南大学 女子陸上競技部@Konan_univTF

こちらは補強を行っているときの1枚です。 補強1つ1つ、どこに効いているのかどのような意図があるのかを考えながら行っています。 #甲南大学 #甲南大学女子陸上競技部

2026年3月30日Xで投稿を見る →

部が外へ出す一言が「何をやったか」ではなく「何を考えながらやったか」である——為末氏の動画と同じ順序です。種目名と回数だけを書き写したメニューからは、この「どこに効いているのか」が抜け落ちます。プランクの秒数を延ばすより、体を移動させる種目(ハードルまたぎ、バウンディング、スパイダーウォーク)へつなぐほうが先です。

補強の効果を測る・安全に上げる|フィールドテストと負荷の段階

補強の効果を測るフィールドテスト、立ち幅跳びを跳ぶ選手

3か月に1回測る4つのフィールドテスト

補強は効いたかどうかの記録が残らない練習です。3か月に1度、同じ条件で測りましょう。

テスト測り方何を見るか
立幅跳助走なしの両脚跳び。つま先から着地時の踵まで両脚で押す力。吉本・斉藤2017の2人は2.89m/2.65m
立五段跳助走なし。1〜4歩目は片脚ずつ交互、5歩目で両足着地片脚で跳び継ぐ力。同じ2人で15.02m/13.80m
リバウンドジャンプ連続で真上に跳び、接地時間と跳躍高から指数を出す接地を短くしたまま高さを保てるか
20回連続ハーフスクワットジャンプ(HDI)(初期3回の平均高−最後3回の平均高)÷初期3回の平均高×100落ちにくさ。13.6%以下が目標ライン

前2種はメジャー1本で測れます。RJとHDIはスマホのスロー撮影で「接地が短くなったか」「20回目が低いか」を見れば十分。参考値は成人のものなので、自分の前回と比べてください。

弱点からの逆引き表

数値が伸びない・同じ癖が出るときは症状から選び直します(見立ては編集部)。

感じている症状まず入れる種目(手引き掲載)
後半に上体が反って失速するウルトラマン、上体反らし
接地が長く、押す感覚が抜けないリバウンドジャンプ、バウンディング
脚が後ろに流れて前に戻らないハードルまたぎ、バタ脚、MB前上げ
片脚だけ張る・毎年同じ側を痛めるヒップレイズを左右別に
腕振りで肩がすくむ・上体がぶれる斜め懸垂、チューブ引き、懸垂

負荷を上げる順番とやめどき|「いまできる段階から」

手引きの5章は、大腿後面(ハムストリングス)への負荷の上げ方を9段階で示しています。

①筋の柔軟性の獲得/②膝や股関節の単関節での単純筋力/③ヒップリフトやゆっくりとした大股歩行など複合的で軽負荷な力発揮/④スクワットやデッドリフトなどゆっくりとした大きな力発揮/⑤スクワットジャンプ・メディシンボール投げ・ハイクリーンなど瞬発的な大きな力発揮/⑥BOXジャンプやスプリットジャンプなど動作の速い瞬発的な力発揮/⑦スキップやバウンディングなど走動作の強調/⑧上り坂でのスプリント/⑨平地での走練習への復帰。

これは本来、肉離れからの復帰と再発予防のはしごで、手引きも見出し直下に「(以下①〜⑨のうち実施可能な段階から始める)」と添えています。①から順に全部やる表ではありません。同じ章は「これらの段階的なトレーニングや予防のためのアプローチは、競技力向上のためのトレーニングとしても活用が可能です」とも書きます。いま確実にできる段階から上げるのが使い方です。

補強でのケガは、たいてい「あと2回」で起きます。やめどきは①姿勢が保てない②ジャンプ系で接地が明らかに長くなった③痛みが出た——の3つ。すねや足裏の痛みが数日以上続く場合は、練習を中断して専門家に相談してください。故障の初期対応とケアは陸上のケア完全ガイド(故障予防から食事まで)にまとめています。

よくある質問

補強トレーニングは毎日やってもいいですか?

同じ部位・同じ運動形態を毎日やるのはおすすめしません。手引き4章の「休養」は「回復の途中で練習を行うと超回復する間もなく疲労が蓄積していき、身体の状態は高まらず、それどころか低下していきます」と注意します。毎日やりたいなら運動形態を日替わりに。

補強は走る前と走った後、どちらに入れるべきですか?

走る練習が主目的の日は、後です(茨城・宮城の中体連が公開する練習会メニューも、走種目は補強が後でした)。補強そのものが主目的の日は先で構いません。物差しはその日いちばん質を落としたくない練習を、いちばん疲れていない時間に置くの一点。ジャンプ系だけは例外で、疲れてから跳ぶと接地が長くなり狙いから外れます。

プランク(スタビライゼーション)は何秒やればいいですか?

手引きの目安は30秒ほど。手引き自身が「耐えることが目的ではない」と書いている以上、秒数の更新は目的になりません。埼玉医科大学の大久保雄氏の2019年の総説も、neutral zone(腰椎がわずかな負荷で動く中間域)の安定性を制御するには最大随意収縮の30%程度の活動量で十分だと報告されている、としています。秒数より姿勢の種類を増やしてください。

ウエイトトレーニングは何歳から始めていいですか?

年齢より、指導者の監督と技術の習得が条件です。米国のNSCAが2009年に出したポジションステートメントは「レジスタンストレーニングを始められる最低年齢の要件はない」としたうえで、適切な監督者・用具・安全な環境が用意できないなら若年者にレジスタンス運動をさせるべきではない、と釘を刺します。設計の枠は筋力種目1〜3セット×6〜15回/パワー種目1〜3セット×3〜6回/負荷は5〜10%ずつ増やす/連続しない日に週2〜3回。日本スポーツ協会の『発育期のスポーツ活動ガイド』も、12〜14歳は軽度から中程度の負荷、15歳以降で高負荷を開始と示します。

まとめ

  • 補強はやりたい技術に手が届くようにするための体力づくり。「速くなる」効果は合意前だが傷害予防にはポジティブな報告がある
  • 分類は4部位×運動形態の32種目。抜けやすいのは「引く」「反らす」「下半身の曲げる」
  • 走種目はその日の最後の枠に補強を確保。投てきだけ最初
  • 1回10〜20分、同じ運動形態を連日入れない。サーキットは5〜8種目を2〜3周まで
  • 狙う数値は短距離=RJ指数と接地時間、長距離=HDIとHSJmax、跳躍=準備期の跳ぶ量、投てき=全身の投げ

補強は、記録が動くまでのタイムラグが長い練習です。やった内容と3か月ごとの立幅跳・立五段跳の数値が残っていれば、続ける根拠になります。陸上練習ノートアプリ「TRACK HUB」なら、その日の補強メニューとフィールドテストを記録し、月ごとの変化をグラフで振り返れます。