三段跳び(三段跳)のコツを探すと、たいてい「ホップを大きく跳べ」という話に行き着きます。けれど日本陸連科学委員会が公開している実測データを開くと、話は逆でした。2025年インターハイの男子決勝を制したのは、入賞8人の中でホップがもっとも短く、ステップがもっとも長い選手です。この記事では公式の測定データをもとに、練習の優先順位、局面別のコツとドリル、初心者の最初の1か月、競技規則で確認した踏切板とルールまでをまとめます。
この記事でわかること
- 日本選手権の入賞者と世界選手権の入賞者で、どの局面がどれだけ違うのか
- インターハイ入賞者16人の実測値(男女とも、優勝者はホップの大きさで勝っていない)
- 跳躍比より先に追うべき数字(研究が示した相関の強い指標)
- 局面別のコツと中核6ドリル、初心者の4週間メニュー
- 踏切板から砂場までの距離と、無効試技にならないケース
結論:三段跳のコツは「ステップを潰さないこと」に集約される
三段跳で最初に直すべきはステップです。静岡陸上競技協会の指導者講習会資料「三段跳の基本」は、ステップについて、いわゆる潰れが最も起きやすい局面であり、その出来栄えで記録が大きく左右されると明記しています(出典: 静岡陸上競技協会 指導者養成資料「三段跳の基本」)。
なぜステップだけが潰れるのか。筑波大学陸上競技研究室のコラムによると、Hay(1995)は三段跳のステップには体重の14〜22倍もの負荷がかかると報告しています(出典: 筑波大学陸上競技研究室 Rikupedia「三段跳の跳躍比について」)。助走スピードを3回の接地で受け止める種目なので、2回目の接地に力が集中します。ここで負けると、残りのジャンプも道連れです。
まず押さえる3原則
- ホップは高く上げず、助走の延長で前に跳び出す(跳び出し角の目安は15度程度)
- ステップはくるぶしの下で接地し、体の真下で力を出す(つま先接地・かかと接地は減速に直結)
- ジャンプはステップの結果でしかない(同資料はジャンプについて、ステップからの流れが重要となるためステップの改善が優先となる、と順番を明示しています)

走幅跳と三段跳では、踏切でやるべきことが逆向きだという点にも注意してください。筑波大学陸上競技研究室のコラムによると、走幅跳が水平速度の減少を抑えつつ鉛直速度を大きくするのに対し、三段跳は鉛直速度の獲得よりも水平速度の維持を優先します。同コラムは踏切離地時の跳躍角について、走幅跳の18〜22度(浅見1988)に対し三段跳は12〜19度(Antonini 2015)という報告を引いています(出典: Rikupedia「走幅跳と三段跳の踏切局面における重心速度の方向変換の違い」)。
ホップ・ステップ・ジャンプの比率|日本と世界を分けているのはどこか
跳躍比とは、ホップ・ステップ・ジャンプの合計距離を100%としたときの各局面の割合です。ここに、日本陸連自身が測った具体的な数字があります。
日本選手権の入賞者は、6人全員がホップ型だった
日本陸連の『陸上競技研究紀要』に載った柴田篤志さんらの報告は、2024年日本選手権の男子三段跳6位までの入賞者を高速カメラ240fpsで撮影し、2017年世界選手権の入賞者と比較しています(出典: 柴田篤志ほか(2024)2024年日本陸上競技選手権大会における男子三段跳上位入賞者のキネマティクスの特徴/陸上競技研究紀要 20: 134-140)。
| ホップ | ステップ | ジャンプ | 実測距離 | |
|---|---|---|---|---|
| 2024年日本選手権 入賞6名の平均 | 6.24m(38.3%) | 4.69m(28.8%) | 5.38m(33.0%) | 16.31m |
| 2017年世界選手権 入賞者の平均 | 6.03m(34.9%) | 5.19m(30.0%) | 6.08m(35.2%) | 17.30m |
論文は、全ての日本人選手のホップ比率が37%を超えており、Hay(1992)の分類をもとにすると全選手がホップ型に該当したと述べています。世界選手権入賞者はホップとジャンプの比率が同程度で、バランス型でした。距離で見ると差がはっきりします。ホップだけは日本人のほうが21cm長いのに、ステップで50cm、ジャンプで70cm負けている。論文も、17m台を目指すにはホップ距離をわずかに抑えつつステップ距離を大きくすることが有効である可能性があると結論づけています。
高校トップ8人を並べると、同じ15m台でも型は割れている
日本陸連科学委員会は、2025年インターハイ(広島広域公園陸上競技場)の男子三段跳決勝について、「助走速度分析速報」として入賞8名全員の助走最高スピードと局面距離・比率を公開しています(出典: 令和7年度全国高等学校総合体育大会 WBGT・バイオメカニクスデータ集/日本陸上競技連盟科学委員会)。踏切ロスはデータに含まれない旨が同資料に明記されています。
| 順位 | 選手 | 記録 | 助走最高スピード | ホップ | ステップ | ジャンプ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 磯山福太郎(西宮東) | 15m74 | 9.60 m/s | 5.35m(34.0%) | 5.02m(31.9%) | 5.37m(34.1%) |
| 2 | 後藤大輔(北海道栄) | 15m68 | 10.07 m/s | 6.22m(39.7%) | 3.99m(25.4%) | 5.47m(34.9%) |
| 3 | 大森恵偉音(福岡第一) | 15m48 | 9.94 m/s | 5.99m(38.7%) | 4.33m(28.0%) | 5.15m(33.3%) |
| 4 | 長尾一輝(洛南) | 15m30 | 9.44 m/s | 5.54m(36.2%) | 4.65m(30.4%) | 5.11m(33.4%) |
| 5 | 板野結希(滝川) | 15m28 | 9.88 m/s | 5.56m(36.4%) | 4.18m(27.4%) | 5.54m(36.2%) |
| 6 | 宮崎悠真(十日町) | 15m09 | 9.98 m/s | 5.74m(38.0%) | 4.04m(26.8%) | 5.31m(35.2%) |
| 7 | 田川瑛介(関大北陽) | 15m05 | 9.81 m/s | 5.63m(37.4%) | 3.98m(26.4%) | 5.44m(36.2%) |
| 8 | 角田知優(岡崎城西) | 14m91 | 9.47 m/s | 5.46m(36.6%) | 4.42m(29.7%) | 5.03m(33.7%) |
優勝した磯山選手のホップは5m35で、入賞8人の中でもっとも短い数字です。その一方でステップは5m02と8人中ただ一人5mを超えており、2番目に長い長尾選手の4m65を37cm上回っています。助走最高スピードは9.60 m/sで8人中6番目。もっとも速かったのは2位の後藤選手(10.07 m/s)ですが、ステップは3m99で記録は6cm届きませんでした。ステップをもっとも長く跳んだ選手が勝っています。
女子決勝では、同じ記録でも中身が違っていた
同じ資料には女子決勝の入賞8名も載っています(同スライドは比率も併記していますが、併記された距離から計算した値と一致しないため、本記事では距離のみを使います)。
| 順位 | 選手 | 記録 | 助走最高スピード | ホップ | ステップ | ジャンプ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 菅野穂乃(山形市立商) | 12m77 | 8.84 m/s | 4.63m | 3.64m | 4.50m |
| 2 | 西村玲奈(西城陽) | 12m77 | 8.66 m/s | 4.67m | 3.88m | 4.22m |
| 3 | 大西海優(新居浜東) | 12m44 | 8.71 m/s | 4.48m | 3.44m | 4.52m |
| 4 | 岡島奏音(皇學館)※ | 12m38 | 8.21 m/s | 4.48m | 4.01m | 3.89m |
| 5 | 成澤柚日(共愛学園) | 12m34 | 8.18 m/s | 4.51m | 3.02m | 4.81m |
| 6 | 酒井珂璃那(八王子) | 12m24 | 8.35 m/s | 4.49m | 3.59m | 4.16m |
| 7 | 福間璃子(大田) | 12m15 | 8.25 m/s | 4.44m | 3.54m | 4.17m |
| 8 | 今屋沙和子(熊本)※ | 12m03 | 8.66 m/s | 4.64m | 3.28m | 4.11m |
※印の2名は、2ピット開催の都合で4本目のファールが分析対象になったと同資料が注記しています。記録の欄は公式記録、局面距離はその別の試技の値なので、以下の比較からは外します。
読みどころは2つあります。ひとつは1位と2位が同じ12m77でありながら、菅野選手はジャンプが28cm長く、西村選手はステップが24cm長いこと。同じ記録に別の組み立てで届いています。もうひとつは局面距離の幅です。記録と局面距離が対応する6人で見ると、ホップは4m44から4m67までの23cmしか開いていないのに、ステップは3m02から3m88で86cm、ジャンプは4m16から4m81で65cm開いています。入賞者どうしの差は、ホップにはほとんど出ていません。なお優勝した菅野選手の助走最高スピード8.84 m/sは、掲載された8人の中で最速でした。男子の優勝者が6番手だったのとは逆です。勝ち方は1つではありませんが、どちらの優勝者もホップの大きさで勝ってはいません。
ただし「比率そのもの」が記録を決めるわけではない
ここは誤解しやすいので、はっきり書きます。柴田篤志さんらが『体育学研究』に発表した論文は、実測距離で11m29から15m27までの女子三段跳競技者100名を分析し、跳躍比と実測距離の間に有意な関係はなかったと報告しています(実測距離は公式記録に踏切ロスを足した値です。出典: 柴田篤志・清水悠・小山宏之(2019)女子三段跳における助走スピードと各歩の跳躍距離および跳躍比とパフォーマンスとの関係/体育学研究 64(2): 573-585)。競技レベル別に5群へ分けても、ホップ比・ステップ比・ジャンプ比のいずれにも有意差は出ていません。跳躍比はホップ比が概ね35〜40%、ステップ比が概ね25〜30%、ジャンプ比は30〜40%に収束しており、ある範囲には収まるが、その中のどこにいるかで記録は決まらないということです。
では何が記録と結びついていたのか。同論文が報告した相関係数は、ホップとステップの合計距離がr=0.938、助走の最高スピードがr=0.878でした。「35:30:35を目指す」のではなく、ホップとステップを足した距離を伸ばすこと。そして、その土台として助走の最高スピードを上げること。比率は、自分がどの型にいるかを知るための物差しとして使ってください。
自分の跳躍比とホップ+ステップ距離を測る3ステップ
前掲の柴田ほか(2019)は、ホップとステップの合計距離はジャンプの接地位置で評価でき、踏切位置からの距離が既知の点を使えば映像から簡易的に推定できると述べています。
- 基準点を決める。走幅跳の踏切板など踏切線からの距離がわかっている点を使う。無ければ助走路の脇に1mごとにマーカーを置く
- 真横から動画を撮る。踏切区域は堅い路面で跡が残らないため、3回の接地が入る画角で固定撮影するのが確実
- 3区間の距離を出して100分率に直す。踏切線からホップ接地まで、そこからステップ接地まで、そこから砂の最近点まで
合計の扱いは資料によって違います。柴田ほか(2024)は踏切線から足先までのずれ(踏切ロス、日本選手権入賞者で平均0.14m)を足した実測距離を分母にし、科学委員会のインターハイ速報は踏切ロスを含めません。どちらの定義で比べるかだけ揃えてください。
記録別の目標値(女子)
柴田ほか(2019)は、回帰式から競技レベルごとの目標値も示しています(同論文Table 5)。
| 実測距離 | 助走最高スピード | ホップ+ステップ距離 |
|---|---|---|
| 15m50 | 9.44 m/s | 10.09m |
| 15m00 | 9.27 m/s | 9.77m |
| 14m50 | 9.11 m/s | 9.44m |
| 14m00 | 8.94 m/s | 9.12m |
| 13m50 | 8.77 m/s | 8.80m |
| 13m00 | 8.61 m/s | 8.47m |
| 12m50 | 8.44 m/s | 8.15m |
| 12m00 | 8.28 m/s | 7.83m |
| 11m50 | 8.11 m/s | 7.50m |
局面ごとの目標値も載っていますが、ここでは追うべき2つだけを抜き出しました。ホップ+ステップ距離の回帰式は決定係数R²=0.879ともっとも高く、ステップ単独(R²=0.685)やジャンプ単独(R²=0.683)を上回っています。
使い方の例をひとつ。インターハイ女子で優勝した菅野選手は、記録12m77に踏切ロス0.13mを足した実測距離12m90で、ホップとステップの合計は8m27。12m50の行の8m15は上回っていますが、13m00の行の8m47には届いていません。助走スピードで8人の先頭に立ちながら、まだ前半2局面に伸びしろを残していたことになります。なおこれは女子を対象にした研究の値で、男子は同じ形式の目標値表が見当たらないため、上のインターハイ・日本選手権の実測値を参照してください。
型別の逆引き処方表
測った数字から、いま直すべきことを引けるようにまとめました。判定は2段階です。まずホップ比からジャンプ比を引いた値で型を決めます。Hay(1992)の分類では、もっとも大きい局面が次に大きい局面より2%以上大きければその局面の優位型、2%未満ならバランス型。三段跳ではステップがもっとも小さいため、実質はホップとジャンプの比較になります。次にステップ比を見ます。
| ホップ比-ジャンプ比 | ステップ比 | 起きていること | まず直すこと | インターハイ男子入賞者 |
|---|---|---|---|---|
| +2.0以上(ホップ優位型) | 26%未満 | ホップで高く上がり、ステップが潰れている典型。初心者に多い | 跳び出し角を下げ、踏切板の上で加速する意識を持つ | 後藤(2位) |
| +2.0以上(ホップ優位型) | 26〜29% | 破綻はないがホップに頼っている。日本の上位選手に多い形 | ホップをわずかに抑え、ステップ距離を伸ばす | 大森(3位)・宮崎(6位) |
| +2.0以上(ホップ優位型) | 29%以上 | ステップは出ている。失速はジャンプ側 | ジャンプ脚での着地まで練習する | 長尾(4位)・角田(8位) |
| ±2.0未満(バランス型) | 29%以上 | 世界選手権の入賞者と同じ形 | 比率ではなく、ホップ+ステップの距離と助走速度に課題を移す | 磯山(1位) |
| ±2.0未満(バランス型) | 29%未満 | 3局面とも小さくまとまっている | ホップ+ステップの合計距離を目標値と比べる | 板野(5位)・田川(7位) |
| -2.0以下(ジャンプ優位型) | - | 前半2局面で距離を作れていない可能性がある | ホップとステップで消極的になっていないか確認する | 該当なし |
処方は静岡陸協の指導者養成資料によります。右端のとおり、インターハイ入賞8人は全員がどこかの行に入ります。優勝した磯山選手はバランス型かつステップ29%以上の行で、残る課題は比率ではなく距離と助走速度だ、という読み方です。
なお同資料は、初心者はホップが上に上がりステップが潰れるが、中級者ではバランス型になり、上級者ではホップ優位型になっていくと段階を説明しています。見るべきはホップの比率ではなく、その裏でステップが削られているかどうか。表を2軸で引くのはそのためです。
助走の作り方|3区間に分けて95%で踏み切る
助走の最高スピードは記録と強く相関します(女子100名でr=0.878)。静岡陸協の資料は、助走中盤で体がまっすぐな状態であること、ホップの跳び出しをイメージした走りでリズミカルに加速することの2点を挙げ、助走を3区間に分けて考えることを勧めています。
| 区間 | やること | 資料が指摘する失敗 |
|---|---|---|
| 前半 | 地面を押して1歩ずつ加速する | 押す意識が強すぎて脚が後ろに流れる。流れた助走は踏切のリード脚の遅れに直結する |
| 中盤 | 身体を起こし、軸を垂直に保ったまま加速を続ける。目線は砂場の出口あたりの一点 | 踏切板を見ると目線が下がって背筋が曲がる。上がりすぎると身体が反る |
| 後半 | ストライドを短くせずにピッチを増加させ、95%程度の速度で踏み切る | 走高跳や走幅跳のように踏切1歩前で重心を下げる |
後半の「ストライドを縮めない」は、走幅跳の助走に慣れた選手ほど外しやすいところです。歩数合わせ自体は走幅跳と共通なので、逆走法による助走距離の決め方やマークの置き方は走り幅跳びの助走の合わせ方を解説した記事を土台にしてください。
助走で得た速度は、3回の接地で確実に削られます。前掲の柴田ほか(2024)によると、日本選手権入賞者の身体重心の水平速度は、ホップの踏切接地時に平均9.92 m/sだったものが、ジャンプの踏切離地時には6.75 m/sまで落ちていました。三段跳びでは、上げた速度を3回の踏切で守れるかまでが1セットになります。
局面別のコツとドリル|ホップ・ステップ・ジャンプ
ここからは静岡陸協の指導者養成資料をもとに、局面ごとのポイントを整理します。
ホップ:15度で前に跳び出す
- 踏切板の上では加速する意識を持ち、助走の延長でまっすぐ前方に跳び出す
- 踏切脚を前方に巻いて膝の位置を骨盤の前まで戻し、ステップの踏切につなげる
- 跳び出した後は腕を伸ばして大きく回し、体の正面まで伸ばしたまま戻す
同資料は、助走の流れから小さい角度で跳び出し(15度程度)、リード脚と踏切脚、腕が連動して動きステップの準備をする必要があるとしています。ホップで「跳ぶ」意識を持った瞬間に角度が上がるので、踏切板はあくまで加速の続きです。
腕振りも分かれ目のひとつ。同資料は、速度を維持しやすいシングルアーム、大きな反発を受けられる代わりに準備で助走速度が落ちやすいダブルアーム、ホップだけシングルにするコンビネーションの3種類を挙げ、コーチと相談して選ぶべきだと結んでいます。

ステップ:くるぶしの下で接地し、タメて挟み込む
- 踏切脚の接地はくるぶしの下で行い、瞬間的にローリングさせてつま先に抜ける
- 上半身は地面と垂直を維持し、接地のタイミングを待つ(リラックスと一瞬の出力=タメ)
- 空中では股関節(骨盤)を開き、接地に合わせて腕とともに積極的に乗り込み、挟み込む
接地位置の指摘が具体的です。つま先やかかとでの接地になると足首に大きな力がかかって支えられず、減速につながる。だから下腿部の骨の先にあるくるぶしの下で支える、という説明です。前掲の筑波大学のコラムによると、築野ほか(2011)も、世界一流の競技者は踏切脚をより身体重心の近くに接地することで減速が発生する踏切前半時間を短くしていたと報告しています。
ジャンプ:走り幅跳びの逆脚で着地まで練習する
三段跳のジャンプ脚は、走幅跳の踏切足と逆になる選手が多い——静岡陸協の資料はここに実務的な提案を置いています。逆脚になるために踏切からの着地の練習が行われない場合が多いので、ジャンプ脚での幅跳び練習を着地まで行うことで、短時間での跳躍距離の伸びが期待できる、という指摘です。日本勢がもっとも失っているのもこの局面で、前掲の柴田ほか(2024)によると、ジャンプの踏切離地時の鉛直速度は日本選手権入賞者が平均2.61 m/sと、世界選手権入賞者の2.92 m/sより0.31 m/s小さく、3つの跳躍の中で差がもっとも大きくなっていました。
中核6ドリルのやり方
同資料はドリルを名称で列挙しているだけで、手順は書いていません。そこで優先度の高い6つのやり方と見るポイントを編集部で補いました(ドリル名と狙う局面が同資料、動作と本数が編集部の補足です)。
| ドリル | やり方(本数の目安) | 見るポイント |
|---|---|---|
| ホップダッシュ | 短助走から踏切足で1回ホップし、着地後そのまま20mダッシュへ(4〜6本) | ホップで上に上がらず、着地後すぐ加速に戻れているか |
| 板踏み | 踏切板やラインの上を片脚で軽く踏んで抜ける動作を、歩き〜軽いジョグで(20m×2〜3本) | くるぶしの下で接地し、ローリングしてつま先に抜けているか |
| ライン踏みドリル | 白線を1本使い、毎回同じ線上に接地して進む(20m×2〜3本) | 接地が線から外れないか。外れるのは体が流れている証拠 |
| ミニハードルバウンディング | 2m間隔から並べ、跳ねる意識で左右交互に越える(6〜8台×3〜4本) | 滞空で稼がず、接地のたびに弾んでいるか |
| 逆脚走幅跳 | ジャンプ脚(走幅跳の踏切足と逆)で短助走の走幅跳を着地まで(4〜6本) | 着地で膝が抜けず、砂に足から入れているか |
| イーブン三段跳 | 短助走から、3局面をできるだけ同じ距離で跳ぶ(4〜6本) | ステップだけ短くなっていないか |
接地衝撃が大きいので、1回の練習で2〜3種類に絞ってください。同資料は、こうした個別性のトレーニングの後に全面性のトレーニングでまとめるとして助走付き5段跳・短助走から中助走の三段跳・20m跳躍5種を挙げ、仕上げに骨盤の可動域を置いています。三段跳では他の跳躍種目に比べても股関節を大きく使うためです。プライオメトリクスや体幹の種目は陸上の補強トレーニング32種目の記事にまとめています。
三段跳びの始め方|初心者の4週間練習メニューと体づくり
三段跳は「いきなり全助走」がもっとも危険な種目です。順番を決めて入りましょう。
まず中学生について。令和8年度の全日本中学校陸上競技選手権大会(全中)の跳躍種目は走高跳・棒高跳(男子のみ)・走幅跳のみで、三段跳は含まれていません(出典: 第53回全日本中学校陸上競技選手権大会 実施要項)。一方でJOCジュニアオリンピックカップには、U18だけでなくU16にも男女とも三段跳があります(出典: 第20回U18/第57回U16陸上競技大会 実施要項)。中学生年代でも全国大会で三段跳を跳ぶ道はある、というのが正確なところです。
踏切足はホッピングで決める
踏切足は2回続けて体重を受け止める側で、どちらにするかに公式の決まりはありません。編集部としては、左右それぞれでホッピング20mを行い、距離が出て接地が安定する側を勧めます。筑波大学陸上競技研究室のコラムが紹介する稲岡ほか(1993)の報告で、三段跳では左右のホッピング能力との間に有意な相関関係が認められているためです(出典: Rikupedia「二兎を追う者は… -水平跳躍種目のトレーニング-」)。
4週間の段階メニュー
静岡陸協の資料が挙げるドリルを、負荷の小さい順に並べ直したものです。本数は目安で、痛みが出たらその日は打ち切ってください。
| 週 | 技術 | 補助ドリル | 1回の目安 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 立ち三段跳(その場から3回) | ライン踏みドリル/左右のホッピング | 立ち三段跳6本+ホッピング20m×左右2本 |
| 2週目 | 1歩助走の三段跳 | 板踏み/ミニハードルバウンディング | 跳躍8本+ドリル各2セット |
| 3週目 | 5歩助走の三段跳(イーブンを意識) | ホップダッシュ/逆脚走幅跳 | 跳躍8本+ドリル各2セット |
| 4週目 | 中助走(9〜11歩)の三段跳 | 短助走三段跳で跳躍比を測る | 跳躍6〜8本+計測1セット |
全助走に移るのは、中助走で3つの跳躍が安定して並んでからで十分です。避けたいのは3つ。助走速度が上がるほどステップの接地衝撃が増えるのでいきなり全助走で跳ばないこと。前述のとおり高負荷なので跳躍本数を欲張らないこと。踏切区域は堅い足場なので、硬い路面でホッピングを量産せずドリルは芝や土にも分散させることです。脛やかかとに痛みが出たら本数を減らし、長引くようなら専門家に相談してください。すねの内側の痛みはシンスプリントの治し方をまとめた記事で扱っています。
体づくりで測るのは立五段跳
土台を測るならコントロールテストです。熊野陽人さんと大沼勇人さんが『コーチング学研究』に発表した短報は、大学の跳躍選手120名(三段跳は男女各20名)を対象に、立五段跳・メディシンボール後ろ投げ・100mアップヒル走と跳躍記録の関係を調べました。三段跳で男女ともに有意だったのは立五段跳だけで(男子r=0.4884、女子r=0.8169)、坂ダッシュのタイムは男女とも記録と結びついていません。回帰式から示された立五段跳の目標値は、男子15m00で15m60、女子12m00で12m60です(出典: 熊野陽人・大沼勇人(2017)陸上競技跳躍選手におけるコントロールテストの目標値の検討/コーチング学研究 31(1): 127-131)。論文自身があくまで目安だと断っているので、現在地の確認に使ってください。体力トレーニングは効果が遅れて出るため、冬にまとめて積むのが現実的です。期分けは陸上の冬季練習メニューの記事にまとめています。
ルールと試合運び|踏切板・無効試技・6本の使い方
三段跳のルールは走幅跳の準用部分が多く、解説がばらつきがちです。日本陸連の2026年競技規則で引き直します。三段跳はTR31に規定され、TR29(総則-水平跳躍)とTR30(走幅跳)を準用します(出典: 日本陸上競技連盟競技規則 2026 第3部 フィールド競技)。
三段跳の定義と、無効にならないケース
TR31.2は、競技者はホップで踏切った同じ足で最初に着地し、ステップでは反対の足で着地し、つづいてジャンプを行うとしたうえで、試技中に振り出し足が地面に触れても無効試技とはならないと明記しています。古い解説を鵜呑みにしないでください。規則はさらに、次の場合もそのことだけでは無効試技ではないと注意を促しています。
- 踏切線と着地場所の間の白線、または外側の地面に接触した場合
- 競技者がステップの段階で自身の過失によらず着地場所に着地した場合(すなわち審判員が踏切板の距離を誤って設定した場合)。この場合、通常は審判長が試技のやり直しの機会を提供する
2つ目は実戦で効きます。板が合わずステップで砂場に入ってしまっても、原因が板の設定であれば跳び直せる可能性があるということです。ただし規則は、ジャンプ後の着地が着地場所内でなければ無効試技になるとも定めています。逆に無効試技になるのは、踏切足か靴の前部が踏切線の垂直面より前に出た場合(TR30.1.1)などです。
踏切板から砂場までの距離は、男女と年代で違う
もっとも誤情報が多いのがここです。
| 区分 | 男子 | 女子 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 国際競技会 | 13m以上 | 11m以上 | TR31.4〔国際〕 |
| 国内(原則) | 13m以上が望ましい | 10m以上が望ましい | TR31.4〔国内〕 |
| U18(ジュニアオリンピック) | 13m | 10m | 同大会 実施要項 |
| U16(ジュニアオリンピック) | 11m | 10m | 同大会 実施要項 |
TR31.4の国内規定には但し書きがあります。競技者のレベルに合わせて審判長が判断し、男女ともに砂場までの距離を短くすることができる、というものです。板の位置は固定値ではなく、大会ごとに確認するものだと考えてください。なおTR31.5は、踏切板と砂場の間の踏切区域について、少なくとも幅1m220(±10mm)で堅く均一の足場を備えていなければならないとしています。
6本の試技と記録の数え方
TR25.6により、8名を超える場合は各競技者に3回の試技が許され、上位8名にさらに3回が許されます。後半3回の試技順は前半の成績の低い順なので(TR25.6.1)、3回目までの最高記録者が最終跳躍者です。1本目は板合わせに使い、助走マークの修正は足半分〜1足長の単位で小刻みに行うのが実戦的です。記録はTR29.9により、着地場所の痕跡のうち踏切線にもっとも近い箇所から直角に計測します。表示はcm未満を切り捨てた0.01m単位です(TR29.8)。追い風はCR31.17.2で、平均風速が秒速2mを超えた記録は公認されません。
よくある質問
高校生の記録は、どのくらいが目安になりますか?
全国トップのラインなら、2025年インターハイ決勝の8位が男子14m91・女子12m03、優勝が男子15m74・女子12m77でした。ただし男子のこの2つは追い風が+2.3と+2.1で、記録としては公認条件の外です(女子は-0.2と-0.1)。追い風まで含めて見るのが実戦的な目安になります。中学生年代については全中に三段跳はなく、JOCジュニアオリンピックカップのU16が全国の舞台です。
ファウルが続きます。助走のどこを直せばいいですか?
三段跳びのファウルは「踏切板に合わせにいった結果」で起きがちです。板の手前で歩幅を詰める癖がついていると、合わせた日ほど記録が落ちます。まず助走距離を1足長ずつ後ろに下げて、詰めずに踏み切れる位置を探してください。規則上、踏切板の手前で踏み切っても無効試技にはなりません(TR30.3.2)。
三段跳び用のスパイクはありますか?
走幅跳・三段跳び用として売られているモデルがあり、踵のクッションが厚めなのが一般的です。踏切区域の堅い路面で2回踏み切るためです。選び方は陸上スパイクの選び方の記事にまとめています。
跳躍比は何本測れば当てになりますか?
1本で判断しないでください。短助走の三段跳を3〜4本撮り、ステップ比がどの程度ばらつくかまで見てから型を判定することを勧めます。ばらつきが大きいうちは、型より先に接地の安定が課題です。
まとめ:三段跳は「測って、型を知って、ステップから直す」
- 日本選手権の入賞者は6人全員がホップ型。ホップは世界より21cm長いのに、ステップで50cm、ジャンプで70cm負けている
- インターハイ男子で優勝した選手は、8人の中でホップがもっとも短く、ステップがもっとも長かった
- インターハイ女子で記録と局面距離が対応する6人では、ホップの差が23cmなのに対しステップは86cm、ジャンプは65cm開いていた
- 跳躍比そのものは記録を決めない。追う数字はホップ+ステップの合計距離と助走の最高スピード
- ホップは15度程度で前へ。ステップは体の真下でタメてから挟み込む
- 踏切板の位置は大会ごとに違う。国内の原則は男子13m・女子10mだが、審判長の判断で短くできる
跳躍比とホップ+ステップの距離は、一度測って終わりにせず、助走の歩数や本数と一緒に残しておくと、調子が落ちたときに原因を特定できます。陸上練習ノートアプリ「TRACK HUB」なら、その日の跳躍本数と記録、局面ごとの距離をそのまま練習ノートに残して、数週間単位の変化として見返せます。



