女子800mの日本ランキング2026、今季のTOP30を記録・所属・大会名・会場・日付つきで全30行そろえました。今季の日本最高は久保凛(積水化学)の2分01秒54。自身が持つ日本記録1分59秒52には2秒02届いておらず、2026年はまだ誰も2分の壁を切っていません。9月13日の全日本実業団では田中希実(2分02秒18)と塩見綾乃(2分02秒30)が22年ぶりに大会記録を書き替えました。順位づけはWorld Athleticsの日本トップリストを基盤にし、全30行を国内の主催団体の公式リザルトで照合しています。

この記事でわかること

  • 2026年の女子800m 日本TOP30(記録・所属・区分・大会・会場・日付の全30行)
  • 1位・久保凛の2分01秒54が、日本記録・派遣設定記録・世界リストのどこに位置するか
  • 9月13日の全日本実業団で22年ぶりに大会記録が動いた一件と、田中希実の5年ぶり自己ベスト
  • アジア大会2026の女子800m日本代表2人と、派遣設定記録2分01秒67の意味(日本陸連公式の決勝映像で見えたもの)
  • TOP30がどの大会で生まれたか(日本選手権11人・ホクレン7人・インターハイ3人)と、今季の男子800mとの対比

明るい競技場のトラックを走る中距離の選手たち

2026年 女子800m 日本ランキングTOP30

2026年シーズンの女子800m・日本人TOP30です。1人につき今季ベストの1本だけを載せています。

順選手所属区分記録大会(会場)日付
1久保 凛積水化学社2:01.54第110回日本選手権(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/13
2塩見 綾乃岩谷産業社2:01.67第110回日本選手権(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/13
3田中 希実豊田自動織機社2:02.18第74回全日本実業団対抗(たけびしスタジアム京都)9/13
4勝 くるみ筑波大大2:03.77第110回日本選手権(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/13
5ヒリアー 紗璃苗わらべや日洋社2:04.07第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
6長谷川 麻央岩谷産業社2:04.21ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 深川大会(深川市陸上競技場・北海道)7/15
7木田 美緒莉順天堂大大2:04.51ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 深川大会(深川市陸上競技場・北海道)7/15
8渡部 鈴夏岩谷産業社2:04.60第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
9池崎 愛里ダイソー社2:04.86第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
10川田 朱夏ニコニコのり社2:05.01第34回金栗記念選抜陸上中長距離熊本大会(えがお健康スタジアム・熊本)4/11
11野村 いちごMORE社2:05.03第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
12平野 里歩環太平洋大大2:05.05TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT 2026(世田谷区立大蔵運動公園陸上競技場・東京)5/30
13亀井 咲里京都教育大大2:05.06第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
14森 千莉至学館大大2:05.20第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
15卜部 蘭積水化学社2:05.21ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 士別大会(士別市陸上競技場・北海道)7/18
16佐々木 葉音筑波大大2:05.44第22回U20アジア選手権(啓徳青年運動場・香港)5/31
17原 華澄DEEP JAPAN社2:05.79第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
18戸井田 美空道央陸協社2:05.82ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 士別大会(士別市陸上競技場・北海道)7/18
19河村 英理香愛知アスリート社2:06.04第110回日本選手権 予選(パロマ瑞穂スタジアム・愛知)6/12
20西田 有里立命館大大2:06.35第21回トワイライト・ゲームス(世田谷区立総合運動場陸上競技場・東京)8/8
21今枝 瞳中京大中京高高2:06.44第86回愛知陸上競技選手権 予選(パロマ瑞穂北陸上競技場・愛知)7/18
22道下 美槻積水化学社2:06.98ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 千歳大会(千歳市青葉陸上競技場・北海道)7/4
23山田 はなわらべや日洋社2:07.13第41回静岡国際陸上競技大会(エコパスタジアム・静岡)5/3
23松尾 愛利紗京都教育大大2:07.13TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT 2026(世田谷区立大蔵運動公園陸上競技場・東京)5/30
25長島 結衣順天堂大大2:07.14ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 士別大会(士別市陸上競技場・北海道)7/18
26木村 友香積水化学社2:07.36大会名は未確定・後述(慶應義塾大学日吉陸上競技場・神奈川)4/5
27尾出 七海東海大相模高高2:07.55第79回全国高校総体(平和堂HATOスタジアム・滋賀)8/4
28東 はる須磨学園高高2:07.70第79回全国高校総体(平和堂HATOスタジアム・滋賀)8/4
29児玉 彩花岩谷産業社2:07.75ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026 深川大会(深川市陸上競技場・北海道)7/15
30堤 海遥新潟第一高高2:07.76第79回全国高校総体(平和堂HATOスタジアム・滋賀)8/4

区分は「高=高校生/大=大学生/社=実業団・クラブ・陸協などの社会人」。所属は記録を出した日の公式リザルトの表記に合わせています(18位の戸井田美空は7月の士別が「道央陸協」、9月の全日本実業団が「千歳消防」というように、大会で表記が変わる例があります)。日付はすべて2026年です。

このランキングの作り方と、照合に使った公式リザルト

順位の土台にしたのは、World Athleticsの2026年 女子800m 日本トップリスト(屋外・1人1記録)を2026年9月19日に取得したデータです。集計基準日はこの9月19日になります。このリストには各国連盟を通じて登録された公認記録だけが並ぶため、日本陸連の記録と同じ公認性を保ちながら反映が速く、9月13日の全日本実業団の記録もすでに載っていました。

同じリストを9月16日にも取得しており、再取得分と1行ずつ突き合わせてTOP30の30行が選手・記録・順位のすべてで変化していないことを確認しています。

そのうえで、TOP30の全30行を主催団体の公式リザルトと1行ずつ突き合わせ、氏名の漢字・所属・大会名・記録・組と着順を確認しました。照合に使ったのは、日本陸連(日本選手権・ホクレン・静岡国際)、日本実業団陸上競技連合、全国高校総体(近畿総体2026)、熊本・東京・愛知の各陸上競技協会、関東学生陸上競技連盟の各公式リザルトと、World Athleticsの選手ページです。ホクレンのスタートリストPDFにはフリガナが付いているので、ローマ字表記から漢字を確定する裏取りに使えます。照合で見つかった表記のズレと、1行だけ大会名を確定できなかった記録については、大会別の内訳とあわせて後述します。

上位3人の今季 — 久保凛・塩見綾乃・田中希実

久保凛(積水化学)2分01秒54 — 日本選手権3連覇とアジア大会内定

今季の日本最高は、6月13日の第110回日本選手権で久保凛がマークした2分01秒54です。日本陸連の公式ギャラリーは、この決勝を「3連覇達成!アジア大会内定ボードを掲げる久保凛(積水化学)」と記録しています。

久保選手は2008年1月20日生まれ。積水化学の公式プロフィールでは身長168cm、和歌山県出身、東大阪大学敬愛高校を経て2026年入社と紹介され、目標欄には「アジア大会とU20世界選手権で優勝すること」とあります。

日本陸連が公開している優勝コメントで、久保選手は予選の反省を「予選では、最後の200(m)で脚が動かなくなってしまっていた。前半で力んでしまっていたという反省があった」と語り、決勝は「前半と後半をイーブンで走り、前半のリズムを保ち、(先頭ではなく)後ろでリラックスして走るというレースプランに変えて臨んだ」と説明しています。フィニッシュ直後は「まさか派遣設定記録が切れているとは思っていなかった」と明かしました。

日本陸連の公式アカウントは、レース当日にこの3連覇とアジア大会内定を伝えています。投稿に添えられているのは、「QUALIFIED Aichi-Nagoya 2026」と書かれた内定ボードを両手で高く掲げる久保選手の写真です。

日本陸上競技連盟@jaaf_official

// 【#日本選手権】2日目 ◆女子800m決勝 \\#久保凛 選手が(積水化学)2分01秒54で3連覇達成👏 アジア大会派遣設定記録を突破し、 代表🇯🇵内定です🎉 おめでとうございます‼️ ✅速報 ✨前売・当日チケット発売中✨ パロマ瑞穂スタジアムおよび チケットぴあにて販売‼️…

2026年6月13日Xで投稿を見る →

SNSの引用はこの1件だけです。編集部はランキング1位の選手の顔が写った公式投稿を優先する方針で、所属先の積水化学女子陸上競技部(@SekisuiF)も同日に写真つきで結果を投稿していますが、1件にしぼるため競技団体公式のほうを採用しました。久保選手本人のアカウントは、日本陸連のプロフィール・積水化学の公式プロフィール・World Athleticsの選手ページのいずれにも記載がなく確認できないため、本人投稿は使っていません。

レースプランの変更は数字にも出ています。久保選手は前日6月12日の予選3組を2分03秒09の1着で通過し、翌13日の決勝は2分01秒54。1日で1秒55速くなっています。なお公式リザルトのラップ記録には、この決勝の400m通過として1分00秒が残されています(誰の通過かはリザルトに明示されていません)。日本の女子800mの決勝が、最初の1周を1分ちょうどで入っていくレースだということは押さえておいてよい数字です。

久保選手は今季、8月5〜9日に米国オレゴン州ユージーンで行われた第21回U20世界陸上競技選手権大会にも出場し、8月8日の女子800m決勝で2分04秒00の5位に入っています。この大会の日本勢全体の戦いぶりはU20世界陸上2026の結果まとめで詳報しています。

なお、日本記録1分59秒52は2025年7月5日に国立競技場で出したもので、記録保持者としての所属表記は当時の「東大阪大敬愛高」のままです。日本陸連の日本記録一覧(2026年9月14日現在)でもその表記で掲載されています。久保選手個人の歩みは久保凛選手の記録と戦績をまとめた選手ページで詳しく扱っています。

塩見綾乃(岩谷産業)2分01秒67 — 派遣設定記録とぴったり同じ数字

2位は塩見綾乃の2分01秒67。日本選手権決勝で久保選手と0秒13差の激しい競り合いを演じた記録です。

この数字には、もうひとつの意味があります。日本陸連が公表している「愛知・名古屋2026アジア競技大会 派遣設定記録」の女子800mが、ちょうど2分01秒67なのです。塩見選手は公認記録の表示が設定記録と同じ数字になるタイムでこれを満たしました。100分の1秒でも遅ければ届かなかった、ぎりぎりのクリアです(枠の仕組みは後述します)。

塩見選手は1999年11月26日生まれ。World Athleticsの選手ページによれば自己ベストは2025年8月13日にスイス・フリブールで出した2分01秒01で、今季の2分01秒67はそこから0秒66落ちの数字になります。

日本陸連の公式チャンネルには、この久保・塩見の決着がついた決勝の映像が公開されています。

【第110回日本選手権】女子 800m 決勝

この4分9秒の映像で目を引くのが、トラックに重ねられた黄色いバーチャルラインです。ラインには「派遣設定」と表示され、アジア大会の派遣設定記録のペースが、いまトラックのどこを走っているのかがひと目で分かるようになっています。1周目の途中(動画の1分0秒前後)と最後の直線(同2分1秒前後)の2回、はっきり確認できます。

400m通過の場面では「LAP」の表示も出ます。後半に入ると先頭集団は縦に伸び、最後の直線に入る時点で前は2人だけ。積水化学のユニフォームにナンバー770をつけた久保選手と、ナンバー623の塩見選手です(ナンバーは日本選手権の公式リザルトの記載)。黄色いラインとほぼ重なってフィニッシュに入ってきたのは、この2人だけでした。派遣設定記録の突破が2人で止まったという事実が、映像では「ラインに追いつけたのは誰か」という形で見えます。

田中希実(豊田自動織機)2分02秒18 — 5年ぶりの自己ベストは9月13日

3位の田中希実の2分02秒18は、このランキングでいちばん新しい記録です。9月13日、たけびしスタジアム京都で行われた第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会の女子800m・タイムレース2組で、田中選手が1着でマークしました。

World Athleticsの年次記録推移を見ると、田中選手の800mのベストは2021年9月20日の2分02秒36で止まっていました。その後は2022年に2分03秒10、2023年に2分03秒98、2024年に2分04秒36と並び、2025年は800mの記録がありません。2026年も日本選手権の800mには出ていません。つまり9月13日の2分02秒18は、5年ぶりの自己ベスト更新にあたります。更新幅は0秒18です。

誰もいない陸上競技場のレーンとスタートライン

9月13日の全日本実業団で、22年ぶりに大会記録が動いた

第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会の公式リザルトには、大会記録として「2:02.41 杉森 美保(京セラ)2004」と印字されています。この2004年の記録が、2026年9月13日に2人同時に破られました。

1着の田中希実が2分02秒18、2着の塩見綾乃が2分02秒30。どちらも公式リザルトのコメント欄に「NGR(大会新記録)」が付いています。22年間動かなかった大会記録が、1つのレースで2回更新された形です。

TRACK HUB RESULTS

第74回全日本実業団対抗陸上競技選手権大会

2026-09-13 たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園陸上競技場)

女子800m タイムレース総合結果

順位選手所属記録備考
1田中 希実豊田自動織機2:02.18大会新
2塩見 綾乃岩谷産業2:02.30大会新
3長谷川 麻央岩谷産業2:05.44
4池崎 愛里ダイソー2:06.98
5戸井田 美空千歳消防2:07.68
6野村 いちごMORE2:07.90
7川田 朱夏ニコニコのり2:08.00
8大山 桜花かはひらこ2:08.20

この8人のうち7人がTOP30に入っています。ただしTOP30に載る記録は、田中選手を除く6人とも別の大会で出したより速いタイム。9月の実業団は「今季ベストを更新する場」というより、終盤に上位が顔をそろえる場になっています。

TOP30はどの大会で生まれたか

30の記録を大会別に数えると、産出の偏りがはっきり出ます。

大会人数時期
第110回日本選手権(決勝3・予選8)116/12〜13
ホクレン・ディスタンスチャレンジ2026(深川3・士別3・千歳1)77/4〜7/18
日本グランプリシリーズ(東京MDC 2・熊本1・静岡1)44/11〜5/30
第79回全国高校総体(インターハイ2026)38/4
第74回全日本実業団対抗19/13
第22回U20アジア選手権(香港)15/31
第21回トワイライト・ゲームス18/8
第86回愛知陸上競技選手権17/18
4月5日・慶應義塾大学日吉(大会名未確定)14/5

TOP30の3分の1以上が日本選手権の2日間から出ています。走幅跳や短距離のように記録が年間を通じて各地に分散する種目と比べると、女子800mは「日本選手権に合わせて仕上げる」構造がかなり強いことが分かります。

しかも、その11人のうち8人(5位・8位・9位・11位・13位・14位・17位・19位)の記録は決勝ではなく予選で出たものです。この種目は予選で自己ベスト級のタイムが出やすく、決勝の8人だけを見ていると今季のレベル感を読み違えます。

次に多いのが、7月に北海道で開かれるホクレン・ディスタンスチャレンジです。2026年は7月4日の千歳大会、8日の網走大会、11日の北見大会、15日の深川大会、18日の士別大会の全5戦。公式リザルトで女子800mが確認できるのは千歳・深川・士別の3戦で、その3戦から7人がTOP30入りしています。深川・士別はA組・B組の2本立てで、A組には外国人選手が入って前半からペースが作られました(深川A組の優勝はアメリカの選手で2分02秒29)。日本選手権の後に、記録を狙える組がまとめて用意されるのがこのシリーズの役割です。

3番目に多いのは日本グランプリシリーズで、4月11日の熊本大会(第34回金栗記念選抜陸上中長距離熊本大会)、5月3日の静岡大会(第41回静岡国際陸上競技大会)、5月30日の東京大会(TWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT 2026)から計4人。春のグランプリシリーズ → 6月の日本選手権 → 7月のホクレンという3段階が、女子800mの記録が出る主要ルートになっています。

残りは単発です。7月18日の第86回愛知陸上競技選手権大会では、21位・今枝瞳(中京大中京高)が予選2組で2分06秒44の大会新記録を出しました。公式リザルトの新・タイ記録一覧表には「7月18日 大会記録 女 800m 予選」と記載があり、女子800mの種目ページに印字された従来の大会記録は「2:06.69 平野 里歩(環太平洋大)2024」。今季のTOP30では、記録を破った今枝選手が21位、破られた側の平野選手が12位に並んでいます。なお今枝選手はこの大会の決勝を欠場(リザルトの表記はDNS)しており、2分06秒44は予選のみの記録です。

所属で見ると、2チームだけでTOP30に8人

同じ30行を所属別に並べ替えると、もうひとつの偏りが見えます。

所属TOP30の人数該当選手(順位)
積水化学4久保凛(1)・卜部蘭(15)・道下美槻(22)・木村友香(26)
岩谷産業4塩見綾乃(2)・長谷川麻央(6)・渡部鈴夏(8)・児玉彩花(29)
わらべや日洋2ヒリアー紗璃苗(5)・山田はな(23)
筑波大2勝くるみ(4)・佐々木葉音(16)
順天堂大2木田美緒莉(7)・長島結衣(25)
京都教育大2亀井咲里(13)・松尾愛利紗(23)

積水化学と岩谷産業の2チームだけで8人、TOP30の27%を占めます。日本選手権の決勝8人に限ると、岩谷産業から3人(塩見・渡部・長谷川)が並びました。複数の主力を同じ環境で走らせているチームが上位を固めている、という構図が数字にそのまま出ています。

なお26位の木村友香(積水化学)の公式プロフィールに載っている自己ベストは1500m 4分09秒79から10000m 31分51秒05までで、800mの記録はありません。中長距離が主戦場の選手が春先の1本でTOP30に入っている形です。

区分で数えると、社会人17人・大学生9人・高校生4人。1位の久保凛が高校卒業後の1年目、16位の佐々木葉音がU20世代であることを踏まえると、TOP30に高校生から社会人までの各世代がひと続きに並んでいるのが今季の女子800mの姿です。

照合で見つかったズレと、1行だけ確定できなかった大会名

大会名と会場を全30行そろえる過程で、World Athleticsの表記と主催者の公式リザルトが食い違う箇所が見つかりました。まず順位です。9位・池崎愛里の2分04秒86について、World Athleticsは日本選手権予選1組の3着としていますが、主催者の公式リザルトでは4着。3着は同じ2分04秒86の勝くるみで、1000分の1秒表示は勝が2分04秒851、池崎が2分04秒856と、0.005秒で分かれていました。本記事の表は主催者の公式リザルトに合わせています。

会場名も、英語表記をそのまま訳すと実際の施設とずれます。21位・今枝瞳の会場は英語で「Municipal Mizuho Stadium」ですが、主催者要項の日本語正式名はパロマ瑞穂北陸上競技場で、日本選手権のパロマ瑞穂スタジアムとは別の施設です。22位・道下美槻の会場も英語では「Aoba Park Athletic Field」、公式表記は千歳市青葉陸上競技場でした。逆に、World Athleticsが同じ「Okura Sports Park Athletics Field, Tokyo」と表示する記録が、主催者側では5月30日のTWOLAPS MIDDLE DISTANCE CIRCUIT(12位・23位)は世田谷区立大蔵運動公園陸上競技場、8月8日のトワイライト・ゲームス(20位)は世田谷区立総合運動場陸上競技場と分かれます。表はレースごとの主催者表記に合わせました。

そして1行だけ、主催者のリザルトまで辿り着けなかった記録があります。 26位・木村友香の2分07秒36(4月5日・慶應義塾大学日吉陸上競技場)です。記録自体はWorld Athleticsの公認リストにありますが、同日・同会場の主催者リザルトが公開されておらず、原本を確認できないため大会名は空欄扱いとしています。所属は積水化学の公式プロフィールで確認しました。

アジア大会2026の女子800m — 代表2人と派遣設定記録2分01秒67

愛知・名古屋2026アジア競技大会(第20回アジア競技大会)は、日本陸連の選考要項によると大会全体の会期が2026年9月19日から10月4日まで。そのうち陸上競技は9月23日から29日に行われます。女子800mに出場する日本代表は久保凛と塩見綾乃の2人です。日本陸連の競技スケジュールによると、予選は9月28日(月)20時20分、決勝は9月29日(火)19時50分。会場はランキング上位の記録が集中したパロマ瑞穂スタジアム(名古屋市瑞穂公園陸上競技場)です。

選考の仕組みは、日本陸連の「愛知・名古屋2026アジア競技大会 トラック&フィールド種目日本代表選手選考要項」に明記されています。内定条件の2つ目は「最重要選考競技会で優勝した競技者。ただし、2026年1月1日から最重要選考競技会該当種目終了までに参考競技会で派遣設定記録を満たしていること」。最重要選考競技会は第110回日本選手権で、エントリー枠は「男女各種目最大2名まで」です。

ここで効いてくるのが派遣設定記録です。今季のTOP30でこれを満たしているのは、1位の久保選手と2位の塩見選手の2人だけ。3位の田中選手の2分02秒18でも0秒51足りません。設定記録のクリア者数とエントリー枠がちょうど一致した、という珍しい形になりました。

なお田中選手は、アジア大会には800mではなく1500m・5000m・10000mでエントリーしています。アジア大会全体の日程と見どころはアジア大会2026陸上の日程と日本代表をまとめたガイドで日別に整理しています。

日本記録1分59秒52との距離 — 2026年は誰も2分を切っていない

日本陸連の日本記録一覧(2026年9月14日現在)によると、女子800mの日本記録は1分59秒52、久保凛が2025年7月5日に国立競技場で出したものです。同じ記録がU20日本記録としても登録されています。

これに対して今季の日本最高は2分01秒54。差は2秒02あり、2026年シーズンに1分台で走った日本人選手は1人もいません。TOP30の下限は2分07秒76で、1位との差は6秒22です。

World Athleticsの選手ページによると、久保選手の2分01秒54は2026年の世界リストで184位、塩見選手の2分01秒67は193位。久保選手が1分59秒52を出した2025年は世界66位でした。記録が2秒動くだけで世界での位置は100番以上動く——それが800mという種目の層の厚さです。

同じ800mでも、今季の男子はまったく逆の動き方をしました。男子は日本記録が今季2度更新され、落合晃(駒澤大)が5月30日に1分43秒45まで押し上げています。女子は日本記録保持者が現役で1位に立ちながら記録には届かず、男子は記録そのものが動いたシーズン——という対比です。男子側の全30行と記録更新の経緯は男子800m日本ランキング2026にまとめました。

高校生の現在地 — インターハイ女子800mの決勝は24人が1つの順位表に並ぶ

TOP30に入った高校生は4人。21位・今枝瞳(中京大中京高)の2分06秒44を筆頭に、27位・尾出七海(東海大相模高)、28位・東はる(須磨学園高)、30位・堤海遥(新潟第一高)が並びます。このうち3人は8月4日の全国高校総体で記録を出しました。

運営面で目を引くのは、公式リザルトの「女子800m 決勝」(8月4日18時10分スタート)に24人分の記録が1つの順位表として並んでいることです。組分けまでは公式ページに記載がないため実施方法は断定しませんが、8人で1本のファイナルを行う形ではなく、全国大会の決勝の記録がより多くの選手に残る形になっているのは確かです。

TRACK HUB RESULTS

第79回全国高等学校陸上競技対校選手権大会(インターハイ2026・近畿総体2026)

2026-08-04 平和堂HATOスタジアム(彦根総合スポーツ公園陸上競技場・滋賀)

女子800m 決勝(掲載24人中・上位8人)

順位選手所属記録
1今枝 瞳中京大中京(愛知)2:06.74
2尾出 七海東海大相模(神奈川)2:07.55
3東 はる須磨学園(兵庫)2:07.70
4堤 海遥新潟第一(新潟)2:07.76
5ノラ ジェロティッチ世羅(広島)2:08.09
6荒木 美伊奈鹿児島(鹿児島)2:08.11
7菅野 美波筑紫女学園(福岡)2:08.18
8源代 恵麻新居浜東(愛媛)2:08.66

高校トップの2分06秒74は、このTOP30に当てはめると22位相当です。全国高校総体の決勝上位4人が、そのまま日本ランキングの20位台から30位までを占めている形になります。

自分のタイムの位置を測る、4つの目盛り

この記事の数字を使うと、自分の800mがどのあたりにあるかを公式記録だけで測れます。

目盛りタイム出どころ
日本記録1:59.52久保凛(2025年7月5日・国立競技場)
アジア大会の派遣設定記録2:01.67日本陸連「愛知・名古屋2026アジア競技大会 派遣設定記録」
今季の日本TOP30ボーダー2:07.76本記事の30位
インターハイ決勝8位2:08.66第79回全国高校総体 女子800m

2分08秒台で全国高校総体の決勝8位圏、2分07秒台で日本のTOP30圏という並びになります。参考までに、全国高校総体の決勝24人のうち2分10秒を切ったのは11人でした(下限は2分15秒40)。800mそのものの練習の組み立て方は800mの練習メニューを距離別・時期別にまとめた記事で解説しています。

なお、16位の佐々木葉音(筑波大)の2分05秒44は、5月31日に香港の啓徳青年運動場で行われた第22回U20アジア陸上競技選手権大会の決勝で優勝したときの記録です。World Athleticsの選手ページによると、5月29日の予選は2分10秒72の1組1着で通過しており、決勝ではそこから5秒以上縮めて金メダルを獲得しています。

よくある質問

Q1. 2026年に2分01秒台で走った日本人は何人ですか?

久保凛(2分01秒54)と塩見綾乃(2分01秒67)の2人です。2分02秒台は田中希実(2分02秒18)の1人だけで、TOP10の下限は2分05秒01となっています。

Q2. 日本記録の1分59秒52は、いつ・どこで出た記録ですか?

久保凛が2025年7月5日に国立競技場で出しました。日本陸連の日本記録一覧(2026年9月14日現在)では、当時の所属である「東大阪大敬愛高」の表記で掲載されており、U20日本記録としても同じ記録が登録されています。

Q3. TOP30に入るには、どの大会を狙うのが現実的ですか?

今季のTOP30は、6月の日本選手権(11人)と7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ(7人)で6割。春の日本グランプリシリーズ(4人)を含めると、記録が出る場はこの3つにかなり集約されています。学生・高校生ならインターハイや学連主催のトワイライト・ゲームスからもTOP30入りが出ています。

Q4. 派遣設定記録とは何ですか?

国際大会に代表を派遣する際に、日本陸連が種目ごとに定める記録の目安です。愛知・名古屋2026アジア競技大会の女子800mは2分01秒67に設定されました。選考要項では、最重要選考競技会(第110回日本選手権)で優勝しても、参考競技会でこの記録を満たしていることが内定の条件とされています。

Q5. このランキングはいつ更新されますか?

次回の更新時期は未定です。更新するときは、本文に新しい集計基準日を明記します。記録の追加・訂正は日本陸連やWorld Athleticsの公認処理のタイミングで起こるため、大会直後の数字は変動することがあります。

まとめ

2026年の女子800mは、久保凛の2分01秒54を頂点に、2分01秒台が2人、2分02秒台が1人という構図で終盤に入りました。日本記録1分59秒52までは2秒あり、今季は誰も2分を切っていません。一方で9月13日の全日本実業団では22年ぶりに大会記録が2人同時に更新され、田中希実は5年ぶりに自己ベストを塗り替えました。アジア大会の女子800mは9月28日の予選、29日の決勝。派遣設定記録を満たした久保・塩見の2人が、地元・名古屋のトラックに立ちます。

自分の800mのタイムがこのランキングのどのあたりにあるのか、練習のどこを削れば1秒縮まるのか——そういう振り返りは、記録を残しておかないと始まりません。陸上練習ノートアプリ「TRACK HUB」なら、レースのラップと練習メニューを同じ画面で並べて見返せます。今季の自己ベストと、そこに至るまでの1本1本を、来季の材料にしてみてください。